第二章 ノリコの憂鬱

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 駅への帰り道、私もカオリも沈黙していました。  私は、トモヤに何が起こったのだろうと、そんな心配で頭の中が一杯で、カオリは、そんな私にどう声を掛けていいか分からなかったのでしょう。  ……でも、駅が見えてきた頃、ふとカオリは、トモヤのカバンを胸に抱いてうつむき歩く私に懸命に明るい笑顔を作って口を開きました。 「……まあ、とにかくさ、別に新しい女が出来たってわけでもなさそうだしさ、良かったじゃん」 「………………」 「彼氏、きっとストレス溜まってたんだよ。岩国さんって気強そうだし、それを我慢してたんだけど、プツッ、て切れちゃったんじゃないかな……」  私は、うつむいたまま小さく答えました。 「普通に新しい女でも出来た方がマシだったかもしれない……」 「どういう事……?」  カオリが不可解な様子で聞き返してきたのと同時に、私は顔を上げて答えました。 「だってトモヤ、絶対に様子がおかしいんだもん。トモヤは確かに気は強いけど、それは私とかに対してだけで、友達とか上司とか……少なくても目上の人に対してそんな怒鳴るなんて、口が裂けても言わない……ううん、言えない人なんだよ」 「でもさ、絶対って事は……」
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