第二章 ノリコの憂鬱

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    2  カオリと別れた後、私はその足でトモヤのアパートへと向かいました。  アパートに着くと、来たのはつい先週なのに、何だか何年も来ていないような感じがして、凄く懐かしい気分に駆られました。そんな想いに心を締め付けられながら、私はトモヤの部屋の前に立ち、恐る恐るチャイムを鳴らしました。  返事は――ありません。  私は、もう二、三度押してみました。しかし、やはり返事はありませんでした。  私は考え込みました。それは、合鍵を使うかどうかです。トモヤには、来たい時にはいつでも来いよ、と言われて渡された合鍵ですが、どうも私はいつも間が悪いようで、使うたびに、勝手に入ってきてんじゃねえ!、とか、仕事で疲れてんのに来てんじゃねえ!、とか、とにかくトモヤが機嫌の悪い時にばかり使ってしまって怒鳴られてばかりなのです。  まあ別に、怒鳴られるのは構わないんですが、ただ、今もし開けて、もしトモヤが人に逢いたくなく、一人で考え事をしたい時なら、私は居るだけで邪魔をしてしまう、と思うとトモヤが可哀想で……  ……と、そんな事を悩んでいる時でした。ガチャ、とドアノブが部屋の方から回されました。私は思わず胸を高鳴らせます。そして、ドアが開くと……トモヤが立っていました。 「なんだ、ノリコか……」  トモヤの顔は、ちょっと見ない間にやつれているように思いましたが、今は、そんな事はどうでもよく……目の前にトモヤが……トモヤが…… 「なんだじゃないよぉ……」  私は、トモヤの胸に泣きつきました。
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