第二章 ノリコの憂鬱

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 ……何かがおかしい、そう思わずにはいられませんでした。始めは、本当に浮気でもしているのかな?、とも思いましたがすぐに、違うな、と首を振りました。トモヤの性格を考えたら、もし本当に浮気をしていたとしても、それを理由に私に対する態度を急に変えたりするとも思えません。逆に開き直っていそう、そんな気がします。  でも、それじゃあ一体何が……?  それに、トモヤのあんな優しい笑顔、三年以上付き合ってて始めて見た……  私は、キッチンでコーヒーをいれるトモヤの姿をジッと見つめました。すると、こちらにコーヒーを持ってこようとしていたトモヤは、私の様子に気付くと軽く笑いながら言いました。 「ハハ、何だよ、変な顔で人の顔ジロジロ見て」  また、あの凄く優しい笑顔。 「ああそうだ、会社から俺のカバン持ってきてくれたのな。ありがとう」  ありがとう……?  ウソでしょ……!  トモヤは私に対して、悪かったな、という言葉は使っても、決して、ありがとう、なんて言葉を使った事ないのに!  トモヤは、コーヒーの入ったカップを二つ、一つは私の前に置き、もう一つは手に持ったまま私と向かい合って座ると、一口飲み、それから言葉を続けました。 「俺が会社を辞めてて驚いたろ。ちょっと上司と喧嘩しちゃってな――連絡しなくてゴメンな」  そして、また凄く優しい笑顔……
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