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俺は、そんなノリコを睨みながら入社祝いにノリコに買ってもらったブランド物の通勤バックの中から携帯電話(スマホ)を取り出し、バックを自分の足元に投げつけた。
携帯電話を取り出したのは、もちろん110番するため。そして、こんなにもイラついているのは、突然の悪夢に続きノリコのマヌケな行動のせいだ。
「ったく、トロイ女だな、ドアが開いてる事くらい気づけよ……!」
「ごめん……」
「俺にあやまってどうすんだバカ。俺はオマエの事を思って言ってやってんだよ。オマエが他人に裸を見られても構わないって言うなら別にいいけどよ」
「ヤダよ、そんなの……」
ノリコは俯く。そんなノリコを横目に、俺は手に持った携帯電話の電源を入れる。
ノリコは顔を上げ、少しオドオドしながら口を開いた。
「あのさ……本当にどうしたの?」
俺は吐き捨てるようにに答える。
「ああ? 人が倒れてんだよ。浮浪者だよ」
「死んでるの?」
「多分な」
ノリコは毛布に包まったまま、恐る恐る玄関のほうに顔だけを覗かせる。俺は構わず110番に掛ける。と、すぐに生真面目そうな女の声が出た。
「はい、110番です」
「ええと……うちの前で浮浪者が倒れてて……」
だが――
「人なんか倒れてないよ」
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