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しかし、永久に楽園に居られるわけではなかったのだ。
終わりは唐突にやって来る。
その日。
ロバートが浅瀬で魚を取り、今日の昼食にと処理をしていた時のことだ。
空が割れる轟音。ロバートは慌てて小屋を飛び出した。
何事かと見上げた先にあったのは、まさに世界を終わらせる悪魔の姿だった。そうーー。
プロペラを高速に回転させ、ホバリングする軍用ヘリ。
垂れ下がったロープをつたってするすると屈強な男たちが降りてくる。
ロバートはとっさに逃げようとしたものの、しかしここに逃げられる場所などありはしないと、どこか冷静の頭がその場に足を縫い付けた
後から聞いた話では、沈没した船の乗客乗員の捜索はすでに打ち切られていたが、ある乗客の家族が個人で頼んだ探索者たちが、たまたまこの島から昇る煙を見つけ、国へと報告したのだという。
そうしてやってきた彼らの目に、ロバートはどう映ったのであろうか。ボサボサの髪と髭。そしてボロボロの服を着た彼は、ようやく助けが来たと喜ぶ、哀れな遭難者だったのかもしれない。
しかし本当はこの楽園から追放されることを怯える非力な人間であった。助けて欲しくなどないのだ。そういえたならどれだけ良かっただろう。たとえ、それが絶対に聞き入れられないことであっても。
なぜならーー。
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