世界線を越えた日

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「おじさんも異世界モノに興味あるんすか?」  やはり男性の方へと視線を向けていた我が友人が、酒が入っていたこともあってか若干馴れ馴れしく、俺の頭越しにそう尋ねてみる。 「ああ。興味がある…といえば興味はあるのだが、おそらくそれは君達のいう〝興味〟とはちょっと違う、また別の意味でのものなのだろうな……」  するとその男性は握ったハイボールのグラスに眼を落としたまま、そんなよくわからない答えを口にする。 「君達も、やっぱり異世界転生したいと思うかい?」  そして、ようやく顔を上げてこちらを覗うと、今度は向こうからそう質問を投げかけてきた。 「そりゃあまあ、できることなら…ああ、ただし、その世界で最弱の存在になるとかは嫌ですよ? チート能力ありでおいしい思いができるの必須条件です」 「右に同じです」  その問いかけには友人が即座に返答し、続いて俺もすぐさま首を縦に振る。 「おいしい思い……か。実際の転生はそんなおいしい思いなどできるものではなかったな。強いて言えば〝まだ生きている〟ということぐらいか……だが、その喜びも感じられなくなるくらいに、あるのはただただ永遠の孤独感だけだ……」  対して男性は、再び視線をグラスに落とすとなんだか見て来たような口ぶりで、本当に淋しげな表情を浮かべながら、僕らにというよりは独り言のようにそう呟く。 「おじさん、まるで実際に異世界転生したみたいな口ぶりだね」  やはり俺と同じことを思ったらしく、その意味深な言葉にそう返す我が友であったが。 「ああ。したのさ。本当に異世界転生ってやつを……」   男性は、思いもよらないようなことを大真面目な顔をして言ったのだった。 「……ま、まあたまたご冗談をぉ〜…」  俺とともに一瞬固まった後、友人は苦笑いを浮かべながら、手をひらひらと振って場を和ませようとする。
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