特別じゃない私の一日

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 こういう災難に見舞われる役柄は新しい男と幸せになるか、物語からフェードアウトする。  恐らく、彼の舞台からあっさりと私はフェードアウトしてしまったのだろう。私は都合の良い女で終わって、きっと彼は妊娠させた女と産まれてくる子どもとで家庭を築く。それがほのぼのしたホームドラマになるかはわからない。  でも、十中八九ホームドラマになる予感がする。 「すみませーん! オム焼きそばください!」  なんだか腹立たしくなって、彼と出会う前に好きだったものを頼む。  オム焼きそばがある店で良かったと思いつつ、彼と出会う前のことを思い出す。  大丈夫。時間が巻き戻して彼なんていなかった頃を思い出せばいい。そのときの生活に戻るだけだ。  そう自分に言い聞かせていたけれど、運ばれてきたオム焼きそばは記憶よりずっと美味しくなかった。  あの喫茶店から特に何もなく、私は帰路につき自宅に戻った。  静かなマンションの一室を見て、沸々と孤独感が生まれた。  私は彼の特別になれなかった。その事実を突き付けられて、涙が止まらなくなる。  これから私は何になるのだろう。誰かを特別に思うことも思われることももうないじゃないのか。  色んな不安が頭の中で踊り出し、嗚咽交じりに泣くことしか出来なくなる。  そんな中、スマホの音が鳴る。 『ねぇ、聞いてよ』  喜美(きみ)だ。絶賛子育て中で子どもの写真や動画を無差別に送ってくる。 『可愛くない??』
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