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思えば朝からイマイチだった。
体も心も重たくて、窓の外に広がる青空を見ても晴れやかな気分にはならなかった。
「あー、大学休むかな……」
何曜日だっけ、と確認し、そのつぶやきを即座に撤回せねばならないことに気付いた。
こういう時、出席日数の壁ぎりぎりまで自主休講を活用するやり方が、実は間違っているのではと思うのだが、大抵そういう時は手遅れだ。
大学も三回生となれば少しは卒業を意識していかねばならない。
必修科目を落としている場合ではないのだ。
「出席だけしといて……寝るか」
ありがとう大教室。
ありがとう、学生の受講態度に興味のない講師だか教授だか。
「中身は……後で名護に聞こ……」
名護美津那は、同じ文芸サークルに所属する一年後輩の女子で、なんと、俺の各文章が好きだと言って慕ってくれる稀有な存在だ。
「あのですねぇ、私、もうすぐ二十歳なんですよ。で、二十歳になったからにはお酒デビューとかしたいじゃないですか。だから、私を飲みにつれてってくださいよぉ」
そんなことを言われたこともある。
本気か冗談かは分かりかねたので、二十歳になったら考えようと言ってある。
学科は俺と同じ国文学科なので、必然的に授業でも顔を合わせることが多い。
今日の授業も彼女はきっと教室の前の方で講義を受けるだろう。
スラリとした長身で、黙って立っていればいたって普通の美少女。
真面目で授業をさぼるタイプでもないし、彼女の字が大変美しいので、ノートを見せて貰っても苦にならない。本当に素敵な後輩だ。
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