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彼女の熱量を前に、断固断る姿勢など貫くことは出来なかった。
俺は大慌てでDVDを隠したり、部屋に掃除機をかけたりせねばならず、名護が到着した時には完全にダウンしかけていた。それでもどうにか作業をやり遂げた自分については褒めてあげたい。
そんな俺に対して、名護は笑顔で言った。
「ほら、やっぱり私が来て良かったじゃないですか」
「ありがとう」
俺は弱々しい声でそう返すしかできなかった。
そんな俺の額に、冷却シートを張りながら、ふと思い出したように名護が尋ねてきた。
「あの、先輩が昨日不機嫌だったのは、体調不良だけではないですよね? 私が男の子に誘われてたのを見て、不機嫌になったんですよね?」
「え……」
「それってつまり、アレですかね? つまり先輩は私のことを……」
認めるしかできなかった。言い訳を考えるには、弱りすぎていたからだ。
そして、名護の奴はそれを聞いてからにんまり笑ってこう言った。
「褒めてください。私の名推理、またもや大当たりです」
大学を卒業して社会人となり、一緒に暮らし始め、二人の苗字が同じになった現在も、あの日は二人にとって最も特別な日として扱われている。
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