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自転車で大学まで移動すると、体の不調はより顕著になった。
どうにか大教室まで移動した俺は、予定通り最後列の席を確保した。生徒の姿もまばらな大教室の中で、名護のトレードマークともいえる栗色のボブカットを探した。
目当ての後頭部は、案の定前の方の席に確認できた。
とりあえず呼び寄せようと、スマートフォンをポケットから引っ張り出したところで、俺の行動はぴたりと止まった。
なぜならば、その名護に親しげ極まりない態度で話しかける、明らかなイケメンが現れたからだ。
知った顔ではないから、サークル員ではない。という事は、名護の同期という事だろうか。
笑顔で対応しているところを見ると、知らぬ仲ではないらしい。美男美女の組み合わせは、はたから見てもいけ好かない程度にお似合いだった。
確か彼氏はいないと言っていたように記憶している。とすれば、イケメン君はまだ候補生と言う事か。しかし、名護のまんざらでもなさそうな顔を見ていると、ただでさえ悪い気分がより加速する感じだった。
結果だけ言うと、俺はもうそれ以上のアクションを起こさなかった。
気配を消し、ただ静かに授業の始まりと、終わりを待った。
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