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アパートに帰ってきた俺は、何というか鉛でも抱えている気分だった。
全身重いし怠いし呼吸するのも何だかしんどい。
汗だくになったせいか、軽く寒い様な感じもあった。
気分も相変わらず悪い。
そのままぶっ倒れたいところではあったけれど、汗を落としたくもあった。
「風呂……入るか」
暖かい湯舟にでも体を浸せば、ちょっとは気分も戻るだろう。
最近は寒くなってきたしな。
十五分後、俺は湯船の中にいた。
確かに体は温まる。だが、普段感じているような気持ちの良さがあまりなかった。
むしろ、何だか余計に体が重くなったような気がした。
これはおかしい。おかしいのは俺の思考パターンだが、この時初めてそう思ったのだ。
慌てて風呂から出ると、そのとたん体にとてつもない重たさを感じた。
なるほどな、と頭の中で一つのパズルが出来上がりつつあった。
最後のピースを埋めるべく、引き出しから体温計を引っ張り出して脇に挟む。アラームを待つまでもなかった。首を捻って見つめる液晶の体温表示がどんどん上がっていく。
結局、三十七度八分で止まった。
俺の場合、平熱が三十五度台なので、結構辛めの体温だ。
風邪である事を祈りたい。
風呂に入るまで気づかないとは愚かすぎる。
医者、と思ったがその日が木曜日であることに気付いて諦めた。もう午後だ。
これはまだ序の口の前哨戦。長い経験から行くと、明日からが本当の戦いになることだろう。
念のため、枕元に体温計と水の入ったペットボトルを置いて、俺は布団にもぐりこんだ。
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