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エピローグ
日が経つのは早いもので事件が解決して、二週間が過ぎようとしていた。
事件は被疑者死亡として書類送検され、すでに捜査本部も解散していた。
平裕矢はイケメンで中性的な顔立ちだ。男性にしては華奢で女装もよく似合う。背丈も百六十五センチと男性としては比較的小柄だ。
紅いレインコートを身にまとっても違和感がない。やはり平裕矢が『紅いレインコートの女』を演じていた真犯人だったのだろう。
けれど清川孝一はなにか腑に落ちなかった。
もう一度、改めて映像を確かめてみた。新しく手に入れた防犯カメラの『紅いレインコートの女』の映像だ。斜め上からのアングルなのでフードが邪魔をして顔の表情が覗いて見えない。
「ううゥン……」目を凝らして見つめるが確証は得られない。
見ようによっては平裕矢が変装しているようにも映るが、なにか無性に違和感を感じる。
「……」
一瞬、映像のレインコートの女がニヤリと微笑んだ。青い口紅が不気味さを演出していく。
「ゴックン……」
思わず清川は息を飲んだ。
次の刹那、画像の女性がチラッと防犯カメラの方を仰ぎ見た。その眼差しに覚えがあった。
「ううッ、まさか……?」
そんなはずはない。
瞬間、清川孝一は軽くめまいを感じた。吐き気がしてきた。戻しそうになって、慌てて手で口元を抑えた。一気に心拍数が急上昇していく。
信じられないことだが、この顔は間違いない。
「オッ、オレなのか……?」
どうりで見覚えがあるはずだ。
紅いレインコートの女の正体は清川孝一自身だったのだ。
清川は座り込んで茫然とした。おもむろに左腕に貼ってある絆創膏を剥がした。
「……!」清川は眉をひそめた。絆創膏の下には幾つもリストカットした傷跡が残っていた。
金倉マリエと山野友美は浦美セイラをイジメ抜いて不登校にし、結果的に引っ越しせざるを得なくさせた。
オモチャのいなくなった彼女たちが、次に標的にしたのは清川孝一だった。
次の日から孝一も壮絶なイジメに遭い、ついには精神を病んで幾度となくリストカットをしてしまったのだ。
先月、清川孝一は警官の姿で金倉マリエや山野友美に接近していた。
彼女らも警官の姿をした清川を信頼してついていったのだろう。
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