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気になるあの子に男を勧められる
てっきり、彼女もこちらに少なからず気があるから誘ってくれたものと思っていた。しかし違ったらしい。
むしろなぜか男を勧められた――。柊一の笑顔が凍りつく。
おそらく柊一が一次会の席で最近振られたこと、今までもなかなか長続きしなかったこと、女性の好みなどをべらべらと喋ったせいだろう。彼女は柊一に同情してアドバイスのために連れ出しただけ――。
自分の直感は間違っていなかった。彼女は実に親切だ。しかし、柊一の恋人になる気はさらさら無い。
ショックすぎて言葉を失った柊一を気遣って彼女は謝ってくれる。
「ゴメンね! 本当に失礼だよね。こんなこと初対面で……でも、浅見くん素敵なのに勿体無いって本気で思ったの。なんだかちょっと自分に重ねちゃったっていうか――無いものねだりっていうの? 私背が高いじゃない。だけど、いいなって思う男性ほど小柄な子が好きだったりするんだよね~。自分が好きな人になかなか好かれないのって辛いよね」
(わかる……わかりすぎてもう俺泣きそうだよ)
「彼氏いない私が偉そうに言うのもなんなんだけどね、浅見くん。自分が好きになった人を無理やり振り向かせるよりも、向こうから勝手に自分のことを好きになってくれる人を見つけたほうが幸せになれるんだって!」
「へ、へぇ……」
それはそうだろうけど――と思いつつ柊一は反論する。
「でも今までも、結構女性側から言い寄られて付き合ってきたんだけど……」
「あー、そうだよね。浅見くんイケメンだし。でもね、付き合ったらイメージと違ったとか言われるんじゃない?」
「え! なんでわかるんだ!?」
(エスパーなのか? 初対面なのに!)
「やっぱりね。今日話してて思ったんだけど、見た目派手で遊んでそうなのに実はめちゃくちゃ真面目だよね」
「……それってダメなの?」
「だめってわけじゃないんだよ。真面目なのいいんだけど、ちょっと悪い感じっていうかダメな男っていうの? 女はそういうのに弱かったりするんだよねぇ」
(嘘だろ。真面目で誠実なのがいいんじゃないのか……? 女心難しすぎ……)
「俺、名取さんのことタイプだったから今地味にかなりショックだよ」
「やっぱりそう? なんとなく私に気があるのかなって思った~。ほんっとにごめん。気を持たせるようなことしたら逆に失礼だから言っちゃうけど私は全く好みじゃなくて……」
彼女は申し訳なさそうに両手を合わせた。
「やっぱりそうか……」
「ごめん! 本当にゴメンね。でも浅見くんは素敵だと思うよ。これはお世辞じゃなく本気で。それでね、変なこと言うようだけどめちゃくちゃオススメの相手がいるの」
「え?」
「背が高くて、顔も綺麗で、おおらか……というか大雑把? で、ちょっと強引だけどきっと浅見くんは自分で引っ張るより引っ張られるのが向いてると思うからぴったりだと思うんだよね」
「え……なにそれ最高じゃないか」
「でしょ!?」
たしかに、本当は自分でなんでも決めたりするのって得意じゃない。実は優柔不断なタイプだから、女の子が決めてグイグイ引っ張ってくれる方が楽なのにと柊一はずっと思っていた。一生懸命調べてお店を決めたりするんだけどそういうのを嫌々やってるのも見透かされるのか、無理してるように見えて嫌だとまで言われたこともある。
「じゃあ今度三人で飲もうよ!」
「そんな……いいの?」
(この子天使じゃない?)
「いいの! ただ、その相手っていうのが………私の兄なのよね!」
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