アーモンドの木の枝

1/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「……だから、x=2/3となるんだよ。わかったか?」 「全然わかんない」 なぜだ。もう三回目になるのに、なぜ全然わかんないんだ。 母さんからバイト代をもらった以上、今日中に志帆に一次関数を教えなくてはいけないのに、いったいどうしたらよいものか。 「とりあえず、続きは午後からってことで、昼飯にするか。買い出しじゃんけんするぞ」 志帆は急に真剣な顔つきになって向き合った。 「「じゃんけん、ぽい」」 おれはパー。志帆はチョキ。 「勝ったー! わたし、のり弁とおでんとドーナツね」 「くそぉ……。じゃあ、行ってくるよ。ていうか、食いすぎだ、おまえは」 ダウンを羽織り、靴をはいていると、どういうわけか志帆もやってきて、コートを着込んでいる。 「なんだよ、結局おまえも行くのかよ」 「うん、ちょっと気分転換に散歩したくなって」 「ならおまえが行って、おれの分も買ってきてくれよ」 「えー! お兄ちゃん、じゃんけん負けたじゃない。いっしょに行こうよ」 「ったく、めんどくせえなあ」 高校生にもなって、妹と歩いてるとこなんか、知り合いに見られたくないんだけどな。こいつはそういうこと考えないらしい。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!