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「……だから、x=2/3となるんだよ。わかったか?」
「全然わかんない」
なぜだ。もう三回目になるのに、なぜ全然わかんないんだ。
母さんからバイト代をもらった以上、今日中に志帆に一次関数を教えなくてはいけないのに、いったいどうしたらよいものか。
「とりあえず、続きは午後からってことで、昼飯にするか。買い出しじゃんけんするぞ」
志帆は急に真剣な顔つきになって向き合った。
「「じゃんけん、ぽい」」
おれはパー。志帆はチョキ。
「勝ったー! わたし、のり弁とおでんとドーナツね」
「くそぉ……。じゃあ、行ってくるよ。ていうか、食いすぎだ、おまえは」
ダウンを羽織り、靴をはいていると、どういうわけか志帆もやってきて、コートを着込んでいる。
「なんだよ、結局おまえも行くのかよ」
「うん、ちょっと気分転換に散歩したくなって」
「ならおまえが行って、おれの分も買ってきてくれよ」
「えー! お兄ちゃん、じゃんけん負けたじゃない。いっしょに行こうよ」
「ったく、めんどくせえなあ」
高校生にもなって、妹と歩いてるとこなんか、知り合いに見られたくないんだけどな。こいつはそういうこと考えないらしい。
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