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『スマイル』のことが大好きで、そこで働く従業員さんたちともとっても仲良し。
時々、店内の仕事を手伝ったりしている。
もちろん、『スマイル』に来るお客様のことも大好き。
何時もニコニコ笑顔、つまりスマイルな、幸せを運ぶ妖精さんだ(公式情報より)
藤井自身はスタンプではなく、「今行く」と極めて短いメッセージを松島へと送り返した。
部屋を出る前に今一度、コンロの火を点けっ放しにしていないかを指差し付きで確認する。
居間兼寝室へと行き、クローゼットの中から黒いダウンコートを引っ張り出した。
「『楽しみだよぉ~』か」
何とはなしにつぶやきながらエプロンを脱ごうとして、ポケットに入れっ放しの眼鏡の存在を藤井は思い出した。
眼鏡をかけ、ダウンにしては細身のシルエットのコートに袖を通す。
身長はそこそこあるものの、けして体格がいいわけではないのでダボっとした格好がとにかく似合わないのだ。
他ならない藤井自身はそう思っている。
別に松島本人が「楽しみだよぉ~」と言っているわけではないのは、藤井にもよく分かっていた。
ただのスタンプだ。
松島がではなく他ならぬ自分が『楽しみ』なのを、藤井は知らず知らずのうちに誤魔化していた――。
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