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1. 初めては、座薬
代々木上原の祖父の家でのリビングで、久紀はだらしなく寝転がりながらポテトチップスを咥えていた。自宅でこれをしようものならすぐに、兄・夏輝の叱責が飛んでくる。
中学に上がり、少し勉強が面倒臭くなってきていた。これまでは大してしなくても、テストで苦労することはなかったから、塾など行った試しもない。
たった3つ上の兄は、几帳面で努力家で自分に厳しく手を抜かない。人にはあくまで優しいが、その『人』の範疇に自分は入っていないようである。
「喧嘩か」
父方の祖父・霧生将生が茶をズズーッと啜りながら呆れたように聞いてきた。その反応だけでも、最早またかとさえ言いたくなくなる程の頻回であることが証明されている。
「喧嘩じゃねぇよ。一方的にやられた。たまに帰ってみればさ、親父は不在で兄貴が仁王立ち。やってらんねえよ」
久紀は、まだズキズキと痛む左頬をさすった。
一学期の通知表が散々の結果なのを兄に見られた。夏休みに勉強を教えてやると言った兄に余計なお世話だと反発したら殴られたのだ。兄はそのまま、剣道部の合宿に出かけていった。
夏輝は国立の名門校に通い、九分九厘、東大への道が開かれている。実直で先生受けも良く、警視庁で捜査一課の管理官をやっている父にしてみれば、自慢で自慢でどうしようもないくらいの息子であり、元警察庁官僚であった亡き母などはあの世で、誰が産んだと思ってるのと、嬉しくて踏ん反り返っていることであろう。
「まぁなぁ、あの夏輝とじゃ、比べられてもなぁ」
人の気持ちをズバッと言い当てる祖父が、久紀は嫌いではない。
「勢津子さんもおまえの親父の智希も、まぁエリートと呼ばれる部類だからな。だが久紀、お前の胆力は中々のものだぞ。じーちゃんは、おまえには見所があると思ってる」
「じーちゃんだけだよ、そんなこと言うの」
「空手はいいのか、今日から夏稽古だろ」
「休んだ」
「例の年上の彼女と出かけるのか」
「別れた」
はぁーと、祖父はため息をついた。
祖父・将生は元々この辺りの生まれ育ちで、大手商社を勤め上げ、元々この代々木上原の住宅街にあった家に広い土地を買い足して、家の三倍以上の面積を使って畑をやっている。祖母が亡くなるまでは、大根でも何でも、美味しい漬物にしてくれたものだ。
「で、結局戻らんのか、あちらには」
「夏休みもずっとここにいる」
「ま、好きにせい」
「好きにするさ」
勝手知ったる祖父の家、だ。
警察庁のキャリア官僚だった母が乳がんで突然この世を去ったのは、久紀がまだ8歳の時だった。父母は、子育てはシッターか霧生の祖父母任せで、留守が当たり前という忙しさであった。ならば子供を二人も作るなと言いたかったが、すれ違いな割には仲の良い夫婦だったようだ。だが、忙しさにかまけ、健診もろくに行かず、職場で倒れて運ばれた時にはもう、手の施しようがなかったのだと言う。
父は一旦、閑職を希望したが、ノンキャリの叩き上げの中で有望株の父にそんな我儘は許されなかった。悲しみを埋めるようにして、父は仕事に没頭した。そこで、夏輝と久紀は祖父の元で暮らすこととなったのだ。
優秀な兄は名門中学・高校と進み、この家と父のいる霞が関の自宅とを自由に行き来しながら半ば二重生活を送っていたが、久紀は祖父の家を拠点とし、公立小、公立中と進んだ。
だが実は、今現在の状況はもっと複雑になっている。
母を亡くした父は、母の死の3年後、今から2年前に、職場の近くで会員制の高級サロンを営んでいた女性と再婚した。女優のようなオーラの美人で、その人も再婚の3年前に夫を脳梗塞で亡くしていた。二人は実は大学時代のサークル仲間で、上司の接待のお供でサロンに行った時に再会し、意気投合したのだとか。
だから、本当は、2年前から久紀の自宅はその新しい母らが越して来た霞が関のマンションなのだが、彼らとの生活にはどうにも馴染めなかったのだ。
久紀は転校も良しとせず、祖父の家に住所を置いたまま、今も代々木上原の中学に通っている。
「ごちそうさまでした。美味しかったよ、じーちゃん」
「本当は肉だの魚だの、もっと食わせたいんだがな、簡単ですまん」
簡単な夕食といっても、ここでは野菜の煮物や漬物など、祖父の手がかかった温かな料理が食卓に並ぶ。今も昔も、久紀の親と名乗る連中は忙しさにかまけ、子供が何を食べていようが全く関心がないらしい。いや、自分達もろくなものは食っていない筈だ。家庭科で覚えた料理を夏輝が一生懸命作ろうとしてくれたこともあったが、兄はどういうわけか、炊事のセンスがなかった。
バランスのとれたお菜で白米を3杯平らげると、これまでのイライラが嘘のように消えていく……筈だったが、緑茶と一緒に食卓に上った話題は、到底腹の虫の治まらない内容であった。
「あちらの弟達とは、どうなんだ」
「どうって、10歳と2歳だぜ。チビの和貴はさ、なんかその、可愛いけど……あの光樹ってガキ、生意気だし……」
「おまえも10歳の頃は手に負えない悪ガキだったがなぁ」
「じーちゃん! 俺は嫌なんだ! 兄貴と俺とでむさ苦しくやってりゃ良かったんだよ! あのクソガキ、俺の靴下は臭いだの、勉強しろだの、皿は下げろだの、うるっせーんだよ」
と言って、久紀は慌てて将生の分も皿を集め、流しに皿を下げた。
丁寧に水につける様子を、将生は目を細めて見つめている。
「ほう、母親の美樹子さんではなく、光樹くんが言うのかね」
「そーだよ! あの美樹子って人も、母さんに負けず劣らず家に居ねぇし、あのガキが全部家のことやってんだよ」
「あ、おい、皿はいいぞ、じーちゃんが後でやっとくから」
「このくらいやるよ」
初めて皿洗いを買って出た時は、古いキッチン周りが水浸しになり、後始末が大変だった。しかし生前の妻は孫の一歩を喜び、嬉々として床を拭いていたものだった。
あれから数年経った。手馴れたもので、5分と経たぬ間に二人分の皿は瞬く間に水切りかごに並んだ。むしろ夏輝より余程、久紀の方が器用で飲み込みも早く、順応性も高いと将生は思っている。
「しかし感心だなぁ、実に感心だ。まだ4年生でよくもまぁそこまで……おまえなどカップラーメン1つ作れなかったろうに」
むっつりとむくれる孫息子に、祖父は悪戯気な笑みを向けた。
「それに、随分と別嬪さんだな、あの子は」
「別嬪っつーか、ありゃ氷だよ。俺さ、奴らがまだこの辺に住んでる時、笹塚小で見たことあるんだ。誰ッとも口きかねーの。霞ヶ関に越して来てからも俺らを小バカにしてさ、兄貴でさえ扱い兼ねてるんだぜ」
美樹子と光樹は、元々幡ヶ谷に住んでいた。どういう奇縁か、久紀と光樹は、同じ学区であった。親の再婚で、光樹は霞ヶ関の小学校に移っていったが、その綺麗な顔立ちは学区内でも評判で、わざわざ下校時に光樹を見に来る連中がいた程であった。
スカウトも、1度や2度ではなかった筈だ。
「智希の奴は仕方ないな。ちゃんと家のことを見とらんのか……」
溜息を吐く祖父の追及を逃れるように、久紀は自分の部屋に逃げた。
深夜、突然携帯に兄から電話がかかってきた。また小言かと眠い目をこすりながら出ると、切羽詰まったような兄の声が聞こえてきた。
「私だ。何だ、もう寝てたのか、まだ11時半だぞ」
「うっせーなぁ」
「光樹から電話があった。様子がおかしい」
「は? 親が見てりゃいいんじゃねぇの? 」
「ああ…今日は美樹子さんの仕事は休みの筈だったんだが、代議士の会合が急に入って午後から出かけたらしい。父さんにも連絡したら、事件の帳場が立って出られないって」
「クソ、だったら何でガキなんか産んだんだよ! 2歳児がいるのに頭おかしいだろ」
「久紀……それが、どうも私が合宿で留守をする事、2人共忘れていたようなんだ」
「はあ? 何でも兄貴に押し付けやがって…まさか兄貴、夜行で戻るとか言わねぇよな。都大会のスタメンがかかってんだろ、その合宿」
「もう、夜行バスのチケットは買った、松本駅から20分後には乗る」
マジか……とつい舌を打ち、久紀は電話を耳に当てながらタンスからシャツを引っ張り出した。
「キャンセルしろよ。俺がすぐ行くから」
久紀は電話を切り、部屋着からジーパンとTシャツに着替え、財布とケータイだけを手にして部屋から飛び出した。
丁度トイレに起きてきた将生と鉢合わせし、簡単に事情を説明すると、タクシー代だとすぐに3万円を取り出して久紀に握らせてくれた。
代々木上原はもう終電も終わっていた。タクシーに乗る前に、駅のコンビニで飲み物やら食べ物やらを買い込み、タクシーに飛び乗った。
夜半の道路は空いていて、あれよあれよと言う間に辿り着いた。
オートロックのインターホンを押しても案の定応答はない。久紀は合鍵で自動ドアを突破し、こんな夜でもひんやりとクーラーが効いているエントランスを駆け抜けた。
「おい、いるか」
玄関を開けて電気をつけた途端、久紀は絶句した。
強盗でも入ったのかと思うほど、部屋中が散らかっていたのだ。
驚いたことに、リビングの真ん中で、二歳の和貴がおもちゃのピアノに突っ伏すようにして寝ていた。
クーラーはほんのり効いているし、テーブルにはレトルトの幼児食を開けた形跡があるから、ご飯は食べさせたのだろう。誰が……光樹か。
「光樹」
光樹と和貴が二人で使っている寝室を開けると、光樹が床に倒れていた。ドアに頭が向いているのを見ると、和貴が泣いたか何かして、慌てて世話をしようと起きたのだろう。
久紀はぐったりとした光樹を抱え上げ、ベッドに寝かせた。10歳といえば小学4年生だ。もう少し体がしっかりしていても良いだろうに、驚くほど華奢である。
はぁはぁと苦しそうな息の下から、光樹がその半月型に整った両目を微かに開けた。
「ひさ……久紀にい……」
「もう大丈夫だ。何か飲むか、薬は飲んだか? 」
「和貴が、和貴……」
「ちゃんと寝かせる、大丈夫だ。飯はお前が食わせたのか」
「あれじゃ……きっと、足りないかも……それで泣いて……」
「喋るな。和貴はぐっすり寝てるから大丈夫だ」
額に手を当てると、酷く熱い。場合によっては救急車かと、まずは口の中に体温計を突っ込み、その間に和貴をリビングのマットの上に横たえてオムツを替えた。それほど汚れていない。具合が悪いのに、和貴の世話だけは手を抜かなかったのか。
和貴は、父・智希と継母・美樹子との子だ。二人の唯一の実子であり、和貴の存在があって二人は再婚したのだ。つまり、授かり婚。
「何やってんだ、あのクソ親どもは」
そんな、半分しか血の繋がらない2歳の弟を、自分の体調を顧みずに精一杯世話をしていたのだ、たった10歳の『弟』が。
昼まではシッターも美樹子もいた筈だが、キッチンを見る限り、光樹の分の夕食が用意されていた形跡はない。皿一つ出ていないのだ。
幸い、和貴は熱もなく、よく眠っている。この子は音楽さえかかっていればご機嫌だし、手もかからない。こんな家に生まれただけのことはある。
「光樹、栄養ゼリーなら食えるか。熱冷ましの薬の前に少し胃に入れろ」
スーパーの袋の中からチューブ型のゼリーを取り出し、体温計と差し替えに光樹の口に捩じ込んだ。喉が渇いていたのか、ゴクゴクと喉を鳴らすのがわかったが、全部は到底摂取できなかった。
「クソッ、40度って……薬どこだっけ」
「……僕の……もうない」
「ええっ、何でだよ」
「昼、最後のやつ……飲んじゃった……」
自分と夏輝は、寝ている美樹子とは顔を合わせることもなく、シッターと入れ違うようにして昼前にはここを出てしまった。光樹は短縮授業だが給食はあったから、帰宅は1時半頃の筈だ……美樹子とは顔を合わせていないのか。
「帰ってきた時、もう誰もいなかったのか? 」
「いや、ママはいたけど……支度が忙しそうで……シッターさんは、僕と入れ違いに……すぐ帰っちゃったし」
激しく息を切らしながらも、それでも大人を慮って言葉を選んでいるのが、久紀には堪らなく哀しかった。
「あいつは母親だろ!! 何で言わないんだよ、薬くらい買って来させろよ! もういい、救急車呼ぶぞ! 」
「ダメ! ママに迷惑……」
「バカ、こんな時に何言ってんだよ! 」
だが、立とうとする久紀のシャツの裾を、光樹はしっかりと握りしめていた。
「坐薬……和貴の坐薬、3歳まで半量だけど、僕は丸一個できっと……」
「んな無茶な、だって坐薬って……」
クソッ、と今日だけで十数回めの舌打ちをし、久紀は冷蔵庫に保管してあるという和貴名義の薬袋を見つけて坐薬を取り出した。
説明書通りに準備し、寝室に戻ると、光樹が荒い息で胸を上下に揺らしながら綿の半ズボンを下げていた。
弟といっても他人なのだが、和貴のオムツを替えられるんだから、こいつのだって……と、久紀が足首を持ってゆっくり持ち上げると、光樹が女の子のような声をあげた。
「は、恥ずかしい……」
「だ、だから、い、今そんなこと言うなって! 」
光樹は顔を背け、人差し指を噛んで恥ずかしさに耐えている。
久紀はゆっくりと坐薬を押し込み、入り口を押さえたまま光樹の両足を下ろしてやった。腰を浮かしていた光樹も、ふうーっと力を抜くようにして息を吐き出し、腰を落とした。
「様子を見て下がらないようなら、もう救急車呼ぶからな」
久紀の顔を見ないまま、光樹はコクリと頷いた。
服を整えてやり、ストンとベッドの横に腰を落とした時、携帯が鳴った。
「私だ、順調だから5時には秋葉原に着く。光樹と和貴は」
「今、光樹に坐薬入れた。和貴のだから効くかわからない、あ、和貴はなんともないよ、大丈夫……結局乗っちまったんだな、夜行バスに」
「当たり前だ。足りないものはあるか」
「光樹用の解熱剤がいるかな、食い物もろくなものがない……こいつさ、具合悪いのに、和貴に飯食わして、オムツも替えてた」
「そうか、わかった……薬は買っていく……こういう時はやっぱり頼りになるな、久紀」
「バカ言ってんじゃねぇよ」
明け方になり、光樹の熱は驚くほどあっさりと下がったのだった。
「思えばあの時からよねぇ、私たちの距離が縮まったのって」
「ああ? 」
クリスマスイブの前日、渋谷のホテルのバーで、久紀と光樹はグラスを傾けていた。明日は二人とも仕事で忙しく、例年以上に会える確率が低い。今日も今日とて、久紀は上司の嫌味と書類の山を無視し、光樹も仕事を千切っては投げるようにして、この時間を勝ち取ったのである。
「私の初めては、久紀が入れたざ・や・く」
「バーカ」
光樹が久紀の肩に頭を乗せた。久紀の好きなブルガリのプール・オムが仄かに鼻腔をつく。早熟だった久紀が高校生の頃から愛用するこの香りを嗅ぐだけで、光樹は体の芯が温まっていくのを感じる。この香りに包まれる時が、最も幸せで安らぐのだ。
「あの後兄さんが帰ってきて、久紀と二人で和貴と私の世話をしてくれて……両親より兄さん達が側にいてくれる方が、私には心強かった」
「今ならあの親たち、ネグレクトで逮捕だぜ」
「ホントだね」
「父さんがじーちゃんに殴られるの、あの時初めて見たし」
ああ! と久紀の肩から頭を上げて、光樹が手を叩いた。
「おじいちゃん! 時代劇スターみたいだったよねぇ、大好きだった! あの後すぐさ、家を今の大きさに建て替えて、兄弟4人で一緒に暮らせる様にしてくれたんだよね。マジ豪快」
からからと笑う光樹の、屈託のない光に満ちた笑顔を、久紀は眩しそうに見つめた。
「あの頃は、そんな風に笑うやつだと思わなかった」
「綺麗? 」
「ああ。今の方がずっと」
「久紀が呪いを解いてくれたからだよ」
二人共、カウンターに片肘をついて頰を預けるようにして、お互いを見つめあった。
Aラインのベルベッドのワンピースが揺れる。光樹が足を組み替えると、フレアの中のスリットが捲れ、ロングブーツに覆われていない太腿が悩ましく顔を出した。胸元はカシュクールになっており、ない筈の胸が何となく誤魔化されている。背中からヒップにかけてはタイトなラインで、無駄な肉のない締まった体の曲線が、豹を思わせる。
「それ、美樹子さんのだろ」
「アレンジしたけどね」
「お前が着た方がずっと似合うじゃん」
「あら、怒られるかと思ったけど」
「小さい男って言われるかもしれないが、やっぱ俺は、あの人が許せない。おまえと和貴を危険に晒したあの人をさ」
「解ってる。だから、あの人に似ている私の女装が嫌いなんだよね」
「うん……でも、あの人よりお前の方が、ずっと綺麗だ。何かをちゃんと守ってきただけの芯があるんだよ。実際強ぇし」
久紀の言葉を味わうように、光樹は目を閉じた。少し逡巡し、やがて唐突に立ちあがった。
「ねぇ、もう一杯飲んで待ってて。すぐ戻るから。そしたらイルミ見にいこ」
「寒いぞ」
「んもう、今日は私にサービスするって約束でしょ」
久紀の頰に軽いキスをすると、光樹は弾かれたように駆け出していった。
暫く、いやカクテル5杯分しっかり待たされ、いい加減待たされ疲れてきた頃、漸く光樹は戻ってきた。
「えっ……」
久紀は思わず声をあげた。
自分は仕事着そのままのくたびれたスーツだが、光樹もまた、三つ揃えのミラノラインのスーツ姿になっていた。後ろでまとめた髪もしっかりと撫で付けられ、男性ファッション誌の有名モデルかと見まごう程である。
「クリスマスはロマンチックにって思ったけど……やっぱり、俺のままで久紀といたい」
光樹が『俺』と自分を呼ぶのを、久紀は久しぶりに聞いた。
「猫と仮面と鎧に防災頭巾、いつも被りすぎなんだよ、おめーは」
久紀はバーテンを呼んで会計を済ませ、光樹の腰に手を回した。
夜空の中に浮かぶ青い光の洞窟の下を、二人は体を寄せ合うようにして並んで歩いた。時折好奇の視線を感じながらも、それでも決して手を離すことなく、体温を離すことなく、二人はその幻想の空間を楽しんだのであった。
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