普通の家族の普通の兄

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 陸は9歳で、小学校四年生になったばかりだが、自分には生まれつき、読心術が備わっていて、特に大人の心は読み易いと思っていた。 「お風呂上がったなら、早く寝なさい」  父親の友達が我が家に遊びに来ていて、やれ氷だの、やれつまみだのと、父親が言うものだから、少しイライラしている母親は、八つ当たり気味に、陸に言った。 「まだ、8時だよ!」  もう桜も散る頃だというのに、出しっ放しのコタツに入って、父親とその飲み友達の会話がうるさいから、テレビの音がよく聞こえないので、テレビの真ん前に陣取りながら、陸もイライラして言った。 「8時になったら、寝る時間でしょ?海はもう寝たのよ?!」  大人しく先ほど寝室に向かった海を見た母親は、陸に畳み掛けるように言った。
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