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1 私は国民に自分の○○を飲ませた罪で追放されました。
高窓を彩るステンドグラスには、女神の姿が描かれている。
太陽の光は女神を通すことで神々しさを増し、大理石で造られた謁見の間へと降り注ぐ。
――ここはまるで、神が祝福を与えた聖域のようだ。
誰もがそう思ってしまうほどに、この空間は実に神秘的だった。
だがこの場所に女神はいない。
その代わり、二人の選ばれし者たちがこの謁見の間に揃っていた。
上座にある二つの玉座にはその者らが座り、集められていた臣民たちを見下ろしている。
一人は立派な冠を被った、ソラウェという名の男。
彼はこのファウマス王国の国王であり、聡明な文官や勇猛たる騎士たちを権力によって統べている。
そして彼の隣りにいるのが、修道服を身に着けたニューヒン聖女長だ。
世の瘴気を祓い、平和をもたらす聖女教会のトップを務める女傑である。
彼ら二大巨頭の周囲には鎧を纏った騎士たちがズラリと立ち並び、この城の主たちを堅く守護している。それほどまでに彼らは重要な人物だと言えるだろう。
一方の私――ジュリア・トイハートは、罪人として彼らの面前で跪かされていた。
裁判のような弁明の機会は与えられない。
私はただ、処刑宣告が下されるその瞬間を、目を瞑りながら静かに待っている。
そのギロチンを落とすのは、最高権力者であるこの二人――。
「聖女見習いであるジュリア・トイハート。貴女は身勝手な振る舞いにより、私たち聖女の品位を地に叩き落としました。その事実を重く受け止め、貴女の身分をはく奪し、聖女教会を破門と致します」
「加えて貴様は王族を害し、さらには無辜の民に危険物を飲ませた。これらの罪は非常に重い……よって貴様に、人間領の果て――人外魔境への追放を申し渡す」
聖女長と王に名指しで命令されるという重圧に耐えながら、頭を垂れることで了承の意を返す。
多くの殺意の篭もった視線に晒される中。
私は抵抗することもなく、冷たい石の床の上で最後まで跪き続けていた。
――あーぁ。漸く自分の居場所を見付けたと思ったのに……。
こうして私は、ただ死ぬよりも過酷な土地へ永久追放されることが決まった。
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