汗と自覚

3/8
前へ
/8ページ
次へ
それを伝えると、なんだそれ、と彼はまた歯を見せて笑った。細めた彼の目の縁が、日光で照る。僕はベガを思った。彼を夜空に見るなら、間違いなく彼が一等星だ。 「ていうかさ、静井、全然汗かかないのな。」 「そうかな?」 「そうだよ。羨ましいな、俺超汗かくんよね。」 彼はそう言って短い黒髪をかきあげた。本当だ、汗で前髪が束になって、額にへばっている。それに対して、僕の前髪は夏の微妙なそよぎに浮ついた。 「でもさ、前に読んだことがあるんだけど。」 「へえ、なになに。」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加