黒ニ染マレ

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 そのアカウントをどう知ったのかを訊ねると、鈴木はスカートのポケットからスマホを取り出しながら、「友達とのグループラインにこれが流れてきて……」と言いつつLINEを立ち上げて、該当のグループラインを見せた。すると一人のコメントに「これ見た?」とあり、先ほどのツイートのURLが続いている。これをクリックすれば、該当ツイートに飛べるわけだ。 「さすがにこのアカウントはフォローしなかったけど、いいねとRT(リツイート)はしちゃったよね」 「え!? サトちゃんフォローしてないの? 私即フォローしちゃったよ。他の噂も気になるし」  鈴木の話によると、このアカウントでのツイートは頻繁ではなく月に一度呟くかどうかで、今までのツイートも毎回証拠写真が添付されているわけではなかった。しかしこの噂のツイートで名指しされないまでもほのめかされた生徒は、ツイート後に不登校になったり退学した者もいるという。  ツイートの真偽はわからないが、火のない所に煙は立たないのか、全くの信ぴょう性のない噂でもないようだ。 「特にこの会長のツイートは一瞬でバズってたよね」 「そりゃそうでしょ。今回模擬店の内容変えられたのって、うちのクラスだけじゃないもん」  鈴木と佐藤はひゃははと笑う。まるで「ざまあみろ」とでも言いたげだ。  多聞は自分のスマホを取り出し、Twitterアプリを起動して『清正女子の裏話』を検索した。するとあっさり該当のツイートが見つかる。いいねの数は八百以上、リツイートの数は四百以上に上っており、アカウントのフォロー数も千名を越えていた。しかもそれらの数は、現在リアルタイムでまだ数を増やしている。  サムネイルには、白地に墨字で『裏話』と縦書きされた画像を使用しており、アカウントが作成されたのは二年前のようだが、その他に管理者を特定できそうな情報は記載されていなかった。  多聞が「これだね、きっと。悪意の拡散方法は」と呟くと、忌一の肩口で「人間の文明の利器は恐ろしいのう……」と桜爺が漏らす。  おそらく経過はこうだ。清正女子高の生徒会長は、今回の学園祭で飲食店を禁止したことにより、かなりの人数の生徒たちに恨まれてしまった。そこへ、誰が管理しているのかわからないこの『清正女子の裏話』が、証拠写真付きで会長のスキャンダル内容をツイートする。日付は五日前だ。  当初どれくらいの生徒がフォローしていたのかはわからないが、二年前に作られたアカウントなので既にフォローしていた生徒もいたのだろう。もしかしたらアカウント管理者自身も、別のアカウントでフォローしていたのかもしれない。とにかく会長のスキャンダルツイートは、既に会長を恨んでいた生徒間で爆発的に広まってしまった。
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