黒ニ染マレ

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 このツイートを拡散すると悪意を持った証拠になるのか、その瞬間に黒面子の一部が顔を覆う仕組みのようだ。ほんの少し目を離した隙に鈴木の顔が再び黒く覆われたのも、おそらく『清正女子の裏話』のツイートをRTしたか、そのツイートをラインに流したかだ。  そうやってこのクラスの誰かがこのツイートに辿り着いたのが、四日前の帰宅後だ。その日の夜中にクラス内でそのツイートが拡散され、翌朝凪が登校すると、クラスの半数以上の人間の顔が黒面子の一部に覆われていた。異様な事態と友達が判別できないことに不安を感じ、凪が多聞にDMを送ったのが一昨日の昼間というわけだ。 「この生徒会長、大丈夫かな?」  思わず忌一が口走ると、佐藤が「大丈夫大丈夫。こんなの屁でも無いと思うよ」と言った。多聞が「どうして?」と訊ねると、 「中学が会長と同じ子に聞いたんだけど、中学の頃も相当女子生徒に嫌われてたんだって。文化祭でミスコン1位に選ばれたとかで、かなり男子生徒にモテてたみたいだし。でも空手部の部長と生徒会長を兼任してて、空手では全国大会にも出場してるから、周囲から嫌われても全く意に介す素振りが無いんだって」  すると鈴木が、「私も聞いたことある! 会長の母親はステージママで、物心つく前から芸能活動もしてたんだって」と付け加える。 「ってことは、結構気の強い美人てこと? ちょっとそのご尊顔には興味あるね」  そう言って多聞が鼻の下を伸ばすと、鈴木と佐藤の二人は「多聞先生も普通の男かぁ……」「がっかり!」と言って、急に興味を失ったように看板製作へと戻って行った。多聞は後頭部を掻きながら、「女子高生は手厳しいね」とぼやく。  彼女らは大丈夫だと言うが、黒面子は小者とは言えど死人も出してしまう異形だ。実際どうなのかは疑わしいので、凪の案内で生徒会室を訪れることにした。  私立高の生徒会室というと、勝手に重厚な机やソファがあるのを想像していたが、何かの準備室に使われていたような教室半分くらいのスペースに、長机とパイプ椅子が並べられ、ホワイトボードや書棚があるだけの小さな部屋だった。  生徒会室には、(くだん)の生徒会長を含む三名の女子生徒が椅子に座って何かを話し合っていた。その様子を、多聞らは扉の窓越しにこっそりと覗き込む。 「誰が生徒会長なのか一目瞭然の美人だな……」 「多聞さん、それ何気に酷いよ」 「いやだって、これはしょうがないでしょ? 芸能人並みだもの。二人だって本音ではそう思うでしょ?」  小声で二人に同意を促すと、忌一と凪は顔を見合わせて無言になる。
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