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「まさか……会長以外の二人も黒い顔なの?」
「はい」
「残念ながら」
多聞の「マジかよ……」という言葉と、桜爺の「世も末じゃな」という言葉は重なる。
彼女の場合、断行的な性格も災いしたのだろうが、それよりも天が二物も三物も与えてしまったような優秀さと美貌が、妬みや嫉妬を同時に買ってしまった可能性の方が高そうだ。
廊下で三人がこそこそと話しているのに気づいたのか、中の生徒会役員がやってきて突然扉をガラッと開ける。
「そこで一体何をしてるんですか?」
扉を開けたのは、黒面子の憑いた女子生徒だ。部屋の奥から、生徒会長ともう一人の黒い顔がこちらを覗いている。凪は咄嗟に、「すみません、先輩方。今こちらの多聞先生の取材で、清正女子の校舎を案内していたところです」とフォローした。
「こんにちは。多聞航平です。今日一日こちらにお邪魔してます」
「多聞航平って……もしかして、この前公開してたホラー映画の原作者の?」
凪が肯定すると、生徒会の三人も驚いた様子で「とにかくどうぞ、中へお入りください」と生徒会室内へ招き入れるのだった。
*
促されるまま多聞らがパイプ椅子に腰かけると、顔の黒い生徒会役員の一人がお茶を淹れてくれる。生徒会室にはよく来客があるのか、お茶を淹れるためのポットや急須まで常備されているようだ。
互いの自己紹介を済ませると、会長以外の二人の肩書は、副生徒会長と会計だとわかった。
「取材というのは、この清正女子が次回作の舞台になるということですか?」
興味津々という感じで、目を輝かせて会長が問う。しかし多聞は「いえ、清正女子高校を舞台にする構想はまだ無いですが、現在各地の学校の怪談を集めていまして、こちらの学校には興味深い怪談があると聞いてお邪魔しました」と答えた。
急に妙なことを言い出した多聞に、忌一と凪の背中を嫌な汗が伝う。
「怪談……ですか? 七不思議とかそういう?」
「ええ」
会長は「うちにそんなのあったっけ?」と言わんばかりに他の役員へ視線を送るが、二人とも頭を捻ったり手を振ったりしている。
「昔の代表的な学校の怪談というと、“トイレの花子さん”や“十三階段”、“歩く人体模型”や“音楽室の勝手に鳴るピアノ”なんかが有名ですが、とある学校には『予言黒板』というのがありましてね」
それは、朝登校すると教室の黒板に不吉な予言が書いてあるという怪談だった。例えば、「〇〇さんは、三時間目に手を怪我する」とか、「〇〇君は、休み時間に階段から落ちる」などだ。
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