黒ニ染マレ

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 最初は誰もが悪戯(いたずら)だと思うのだが、ひとたびそれが現実に起こってしまうと途端に薄気味悪くなり、今度は「〇〇さんは、今日骨を折る」や「〇〇君は、三日後に死ぬ」などと、内容がどんどんエスカレートしていくのだ。 「その『予言黒板』とやらがうちの学校に?」 「いえいえ。これはあくまでも昔の怪談の一例なので。最近の怪談には、スマートフォンやインターネットが取り入れられたりしています。この予言黒板も、少し前までは『予告掲示板』なんていうサイトに変わったりしてね」  予告掲示板は、そもそも学級内での連絡に使っていた掲示板サイトで、そこに匿名で不吉な書き込みをされ始めるという怪談だ。その書き込み通りのことが起こると、そこからは予告黒板と同じ展開になる。 「聞いた話によれば、『清正女子の裏話』とかいうTwitterアカウントが存在するとか」  そのアカウント名を出した途端、生徒会長は眉を潜めた。彼女の両隣りに座る副会長と会計の二人も互いに目を合わせ、会長の反応を見守っている。  一方、忌一と凪は何故多聞がこんな話をし始めたのか、やっと理解した。多聞は生徒会役員に見つかったことをこれ幸いと、会長のスキャンダルツイートの真偽を確かめるつもりなのだ。そして運のいいことに会長は、自分についてのツイートやアカウントについても知っているらしい。 「あれが怪談かどうか調べに来たんですか? あれはそんなもんじゃないですよ。完全にうちの生徒による悪戯です」 「でも実際に、該当生徒が不登校や退学になっているそうだね」  ツイートには、裏口入学やパパ活をしたとされる生徒の噂があった。名指しこそされないものの、学年やクラス、所属の部活動などが書き込まれていれば、同じ所属の者にはそれが誰のことを指しているのかわかってしまう。どれも真相は明らかになっていないそうだが、ツイートの数日後から該当の生徒は登校しなくなったという。 「不登校や自主退学のきっかけはあのツイートかもしれませんが、あれが真実でそうなったのかはわかりませんし」 「では会長、貴女についてのツイートは根も葉もない嘘ということですか?」 「それは断言出来ます。あのツイートの男性教諭は今年の三月までこの学校に居ましたが、彼とは一度だけ体育祭の件で呼び出されたことがあるくらいです。画像はその時のものだと思います」  ツイートに添付された画像は、今にもラブホテルに入ろうとしている二人を数メートル後ろから撮られたものだが、この背景が本当は清正女子の校内で、どこかの部屋に入ろうとしている二人を、数メートル離れた廊下から隠し撮りしたものだと彼女は言うのだ。
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