黒ニ染マレ

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「はい。一応は知ってますけど」  忌一が「君はこの生徒会長のツイートに、リアクション取らなかったんだ?」と確認すると、「噂話とか全然興味ないので」と彼女は苦笑する。  先ほど多聞らが生徒会室へ行ったことを話し、会長に関するツイートがフェイクニュースであることを伝えた。そしてこのツイートに添付されている画像の加工について、ここの部員なら誰でも出来るのか訊ねる。 「どうだろ? 一応皆、画像加工のスキルは一通り持ってると思いますけど……」  「ちょっと待ってくださいね」と断ると、部長は目の前のパソコンをいじり始める。モニター画面を覗くと、『パソコン部共有』と書かれたファイルを開け、『加藤』と名のついたファイルの中身を調べ始めた。  ゆっくりスクロールしながら大量に並ぶ画像ファイルを順に見ていくと、会長のツイートに使われたものと構図がほぼそっくりな画像を見つける。背景は職員室の出入り口付近で、五メートルほど離れた後ろからスマホで撮影すれば、このような画像になるのだろう。 「これが元画像じゃないですかね。すぐそばにホテルの入り口の画像もありますし」  フォルダの主である加藤という名の生徒は、前から二列目の一番左端の席にいた。眼鏡をかけたボブヘアの、少し影のある生徒がモニター画面を睨んでいる。何故か部長は真っ先に彼女のファイルを探したが、その理由については深く追求しないまま、多聞らは加藤の席へ歩み寄った。  「ちょっと話を聞かせて貰ってもいいかな?」と多聞は加藤に声を掛ける。彼女はキョトンとした表情だったので、凪が多聞について補足すると彼女は「え? 凄い」と呟いた。どうやら多聞や多聞の作品については知っているようだ。  多聞は自分のスマホに例のツイートを表示させ、加藤に見せながら「この写真の加工、君がやったのかな?」と訊ねると、彼女は目を見開いて「え? 何でわかったの……」と口走る。 「さっき君のファイルの中身を見せて貰ったんだ。そしたら元画像があってね」 「あぁ……消し忘れてた。あの加工は、友人に頼まれてやっただけ」  余りにも悪びれない態度だったので、忌一は少し苛つきながら「頼まれれば何でもやるのか?」と訊ねた。 「やるわけないじゃん、あんな面倒臭い作業。あの時はちょうど欲しい参考書があって、『加工してくれたら三千円あげる』って言われたからやっただけ。ちなみにその加工写真がどう使われるかは、その時全く知らなかったから」  少しは後ろめたい気持ちが芽生えたのか、彼女は視線を合わせずぶっきらぼうにそう付け加えた。
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