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普通に考えて、教師と生徒が映っている画像の背景を校内からラブホテルに変更すれば、それがどんな意味を持つのかわかりそうなものだ。その時画像がどう使われるのか知らなかったというのは、苦しい言い訳にしか聞こえない。
しかし、彼女の顔には黒面子が付いていないことから、お金のためだけに作業をしたのは事実なのだろう。それが人として善か悪かは別として。
「その依頼した友達っていうのは、クラスメイトかい?」
「そう」
「その子のところへ案内してくれないかな?」
多聞がそう言うと、彼女は「それはちょっと……」と言いよどむ。その友人からは、「画像加工の件は誰にも言わないで」と口止めされていたようだ。おそらくその友人が、『清正女子の裏話』のアカウント管理者であるのはほぼ間違いないだろう。
「加藤さん。君、このアカウントの今までのツイートを、ちゃんと読んだことがあるかい?」
そう言って多聞は、彼女の目の前で『清正女子の裏話』のプロフィール画面をスクロールしていく。そこには、これまでのツイートが全て掲載されていた。
「このアカウントのツイートによって噂をほのめかされた生徒は、ツイート後に学校を辞めたり不登校になった人もいるそうだよ」
「私には……関係無いし」
「君の作った画像がここに載っているのに、本当に無関係と言えるかな? 君の作った画像で、生徒会長は現在も偽りのレッテルを貼られたまま学校生活を送ってる。君がもし彼女の立場なら、こんな画像を添付したツイートをされた後も、今までと同じように登校出来るかい?」
「……」
加藤はバツが悪そうに俯いて押し黙る。やっと自分のしでかしたことの意味を、理解したようだ。
「やったことは消えない。この管理者がこのツイートを消さない限りはね。それでもRTといいねを押した人たちの記憶には、残り続けるだろう」
「じゃあ一体、どうすればいいって言うの?」
「画像加工を依頼したクラスメイトを、僕らに教えてくれないかな? 次の犠牲者を出さないためにも」
そう言って多聞は、ニッコリと微笑んで見せるのだった。
*
加藤が案内したのは南館の三階、三年七組の教室だった。南館は一階が下駄箱、二階が一年生、三階が三年生、四階が二年生の教室になっている。三年のクラスのうち進学コースは五~八組で、中でも文系は五・六組、理系は七・八組だ。特に六組と八組は成績優秀で、狙っている大学もランクが上らしい。ちなみに生徒会長は隣の八組に在籍している。
「ここが私のクラス。それであの窓際にいるのが、画像加工を頼んできた今泉さん」
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