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【オヤジの夢はその程度かよ!!】
日付けが変わって、4月9日の深夜0時40分頃であった。
家の前にシルバーのキャデラックが停まった。
キャデラックの後ろの席から、ゴルフウェア姿の昭久が降りた。
つづいて、70後半のゴルフウェア姿の男性一人が降りた。
後ろのトランクに助手席に乗っていた男性が昭久が使っている本間ゴルフのロゴ入りのゴルフバッグと純正のボストンバッグが降ろされた。
70後半の男性は、昭久の直属の上司にあたる人である。
男性は、昭久に対してもうしわけない声で言うた。
「ああ、神谷くん、すまんのう…」
「(ものすごくしんどい声で言う)いえ、いいんですよ…」
ものすごくしんどい表情を浮かべている昭久は、助手席の男性からゴルフバッグとボストンバッグを受け取ったあと家の中に入った。
それからまた10分後であった。
ところ変わって、家の大広間にて…
大広間には、トメと志桜里とイソウロウの祐希の3人がいた。
ゴルフバッグとボストンバッグを持っている昭久は、ものすごくしんどい表情で大広間に入った。
トメは、昭久に対してものすごくあつかましい声で言うた。
「昭久!!」
「(ものすごくしんどい声で)なんだよぅ〜」
「今の今ごろまで、どこへ行ってたのよ!?」
「(ものすごくしんどい声で)どこって、津田(香川県さぬき市)のゴルフ場だよ…上司の人から『社長のお供をせえ!!』と言われたからしかたなく行ったのだよ…」
「作り話をしられん(作り話をしないで)!!」
「作り話じゃないよ!!」
「なにいよんであんたは!!あんたはいつ頃から家族に対してウソをつくようになったのよ!?」
トメがものすごく怒った口調で昭久に言うたので、昭久はものすごく怒った声でトメに言い返した。
「かあさん!!それはどう意味ですか!?オレがウソつきであると言うコンキョはなんなのですか!?」
トメは、ものすごく怒った声で言うた。
「昭久は、うちらに対して『家族のために生きて行く…』と言うたわね!!」
「言うたよ!!」
「家族のために生きて行くと言うた人が休日ごとにゴルフに行くとはどう言うことよ!?」
「かあさん!!オレはドーラクでゴルフに行ったんじゃないんだよ!!会社の人が付き合えと言うたからしかたなく行っただけや!!」
「おかーさんは信用できん!!」
トメと昭久は、よりし烈な口調でののしり合っていた。
たまりかねた志桜里が止めに入った。
「ふたりともおやめください!!なんでおだやかに話し合いができないのですか!?」
トメは、よりし烈な怒りを込めて志桜里に言うた。
「あんたはだーっとりなさい!!うちの問題に口をはさまないでちょうだい!!」
志桜里は、怒った声でトメに言い返した。
「お願いですからおだやかに話し合ってください!!」
志桜里からおだやかに話し合ってほしいと言われたトメは、ますます怒った声で志桜里に言い返した。
「やとい主にメイレイするなんてナマイキね!!おだやかに話し合える状態じゃないわよ!!」
昭久は、ものすごく怒った声でトメに言うた。
「かあさんがオレにガーガー言うから話し合いができんのや!!」
「昭久が家族にウソついてゴルフに行ったから怒っているのよ!!」
「ほんならオレにどうしろと言いたいのだ!!『心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い心細い…』…かあさんはなにが心細いのだ!!」
昭久から怒鳴られたトメは、シクシク泣きながら言うた。
「シクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシク…シクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシク…昭久は、おかーさんの心細い気持ちをなんで解ってくれんのよ…シクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシク…おとーさんが亡くなってから18年の間…おかーさんはずっと心細い想いをしていたのよ…シクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシク…」
たまりかねた志桜里は、怒った声でトメに言うた。
「それだったら、外へ出ればいいじゃないですか!!外へ行けば、奥さまのお仲間がたくさんいらっしゃるのですよ!!」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!あんたにうちの心細い気持ちなんか分かるわけないわよ!!シクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシク…」
トメは、シクシクシクシク泣いてばかりいた。
端で聞いていた祐希は『出ていくワ!!』と怒鳴ったあと家から飛び出した。
昭久は、シクシク泣いているトメをにらみつけながら怒りに震えていた。
時は、朝7時過ぎのことであった。
家の大広間の食卓に、トメと昭久とかおると私立の制服姿のあつことてつやと背広姿の竜史の6人が座っていた。
イソウロウの祐希は、数時間前に家出したので食卓にいなかった。
テーブルの上には、志桜里が作った朝ごはんが並んでいたが、祐希が食べる分はなかった。
食卓に、ものすごく重苦しい空気がただよっていた。
トメは、ものすごく怒った声でかおるに言うた。
「ちょっとかおるさん!!」
「(めんどい声で)なんですか義母さま〜」
「きのう、祐希が市民の森の大蓮池でおぼれた事件があった時、どこで何していたのよ!?」
「その時は、(馬越町の)イオンでパートをしていました…」
「ウソばかり言われん!!」
「そう言う義母さまこそ、その時間帯はどこにいたのですか!?」
「嫁のブンザイでうちに質問するとはどう言うことよ!?」
背広姿の昭久が怒った声でトメとかおるに言うた。
「やかましいだまれ!!朝から嫁姑間のもめごとを起こすな!!クソアホンダラ!!」
昭久は、トメとかおるを怒鳴りつけたあとお茶碗に盛られている白ごはんをバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフバフ…と食べていた。
朝7時40分頃であった。
家の前に、マゼンタのトヨタラウム(ミニバン)が到着した。
ラウムは、近所で暮らしている男の子・雑賀健一郎(33歳くらい・工場の作業員)が運転している車であった。
健一郎は、あつこと同じ私立に通っていた男の子であった。
高校を卒業したあと、広島の工業大学に進学した。
大学卒業後は、今治新都市内にある船舶関連の製造工場に就職した。
健一郎の両親が共稼ぎであったので、神谷の家の人が運転する車で学校に通っていた。
健一郎は、厚意で神谷の一家4人の送り迎えを引き受けていた。
話は変わって…
家の前に車が到着してから2分後に、昭久とかおるとあつことてつやが車に乗り込んだ。
家の前にいる志桜里は、一家4人が乗り込んだ車を送った。
しばらくして、背広姿で黒の手提げカバンを持った竜史が無愛想な表情で家から出た。
志桜里は、ものすごく不安げな表情で竜史の背中を見つめていた。
移動中の車の中にて…
かおるは、やさしい声で健一郎に言うた。
「けんちゃん、いつも私たち4人の送り迎えをして下さってありがとう。」
「(おだやかな声で)いえ、いいんですよ…ぼくは、ちっちゃい時に神谷の家にお世話になったので、恩返しがしたいのです。」
家を出発してから10分後であった。
車は、北日吉町にある私立高校の正門前に到着した。
かおるは、やさしい声でてつやに言うた。
「てつや、ガッコーに着いたよ。」
てつやは、ものすごくつらい表情を浮かべていた。
健一郎は、やさしい声でてつやに言うた。
「てつやさん、ガッコーについたよ…」
制服姿のてつやは、イヤイヤ車から降りた。
その後、ラウムは正門前から出発した。
ブチ切れたてつやは、制服についているネクタイをほどいてすてたあと、どこかへ行った。
ふざけるな…
なにがガッコー楽しんでこいだ…
なにが楽しいコーコー生活だ…
またところ変わって、今治市矢田にある短大の構内にて…
短大の構内に私立高校の分校がある。
あつこは、分校に通っていた。
構内に健一郎が運転する車が到着した。
かおるは、あつこにやさしく声をかけた。
「あつこ、着いたよ。」
あつこは、ものうげな表情を浮かべていた。
健一郎は、やさしい声であつこに言うた。
「あつこちゃん、あと1年がんばったらコーコーは終了するんだよ…1年がんばったら、来年は短大に行くことができるよ。」
かおるは、あつこにやさしい声で『あと1年がんばってね。』と言うた。
あつこは、ものうげな表情で車を降りた。
その後、車は構内から出発した。
それから2分後…
あつこは、構内から勝手に出たあと矢田団地へ向かって歩いた。
なにがあと1年がんばったら短大へ行けるよ…
アタシは、好き好んで私立高校を選んだんじゃないのよ…
アタシは、学生証を短大にひもづけしてとは頼んでないのよ…
それを健一郎くんが勝手にひもづけしたから怒っているのよ…
私立高校なんか…
行きたくもないわ!!
それからまた10分後であった。
ところ変わって、今治市宅間にある溶剤会社(造船関連の会社)の正面玄関前にて…
正面玄関前に、健一郎が運転する車が到着した。
かおるは、つらい声で昭久に言うた。
「あなた、着いたわよ。」
「(怒った声で)わかった!!」
「あなた、そんなに怒らないでよ〜」
「(怒った声で)やかましい!!だまれ!!」
昭久は、より重い足取りで社屋に入った。
それからまた数分後であった。
健一郎が運転する車は、旧道(県道今治波方港線)を通って馬越方面へ向かった。
移動中の車内にて…
かおると健一郎は、楽しくお話をしていた。
「健一郎くんのおとーさんは、来年の春に愛媛県警を退職するのね。」
「ええ。」
「そろそろ、ご両親に何らかのプレゼントをした方がいいと思うわよ。」
「プレゼント…」
「健一郎くんは、好きなコはいないの?」
「まだ…いません。」
「それじゃあダメよ…ご両親は健一郎くんはいつになったらお嫁さんをもらうのかな…と言うてるのよ…早く安心させてあげないと…」
「分かってますよ…あっ、おばさま、着きましたよ。」
車は、馬越町のイオンの前に到着した。
かおるは、車から降りたあとイオンへ向かって歩いた。
その後、健一郎は今治新都市にある製造工場へ向けて車を走らせた。
またところ変わって、矢田団地にて…
コーコーに行ったはずのあつこは、団地内にある小さな平屋で暮らしている男のもとに行った。
男は、あつこが3年ほど前にハートマーケット(昔から愛媛県で営業していたテレクラ)を通じて知り合った40代のカレであった。
(コンコン…)
あつこは、家のドアをノックした。
(ガチャ…)
家のドアがあいたと同時に、上半身裸でキンパツの男が出た。
「あつこ。」
「トモヤ。」
あつこは、トモヤの胸に抱きついて甘えた。
「トモヤ…あつこ…さびしかった…」
「あつこ。」
トモヤとあつこは、抱き合った状態でキスをした。
その後、トモヤとあつこは家の中に入った。
それからまた5時間後であった。
またところ変わって、市民の森の大蓮池の近くにある広場にて…
家出した祐希は、ベンチに座っているちいちゃい女の子にまたなれなれしく声をかけていた。
そこへ、巡回中の警察官が通りかかった。
「コラ!!なんしよんゾ!!」
警察官の怒号を聞いた祐希は、その場から逃げ出した。
ところ変わって、広場から数百メートル先にある藤棚にて…
祐希は、藤棚の近くにある階段へ向かって走った。
祐希は、階段を昇って上の広場へ向かった。
そこで折り悪く、てつやとぶつかってしまった。
(ドカッ!!)
「オドレ伯父!!」
「ヒィィィィィ…」
「ぶっ殺してやる!!」
「ぎゃあああああああああああああああ!!」
てつやは、刃渡りの鋭いナイフで祐希をズタズタに傷つけたあと階段から突き落とした。
祐希は、勢いよく転げ落ちたあと全身を強く打って死亡した。
この時、藤棚のところに警察官がやって来た。
「オイ!!どうした!!」
警察官は、祐希に声をかけた。
しかし、祐希はすでに死亡した。
それから2時間後であった。
愛媛県警の捜査員たち100人が現場の藤棚の近くにある階段で現場検証をしていた。
祐希を斬りつけて殺したてつやは、現場から逃走したあと、丘の下の地区にあるアパートで暮らしている友人の家に逃げ込んだ。
県警は、死亡した祐希を誘拐罪で松山地検に書類送検した。
なお、家族親類に祐希が死亡したことは知らせなかった。
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