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Ⅱ.消化するだけのテスト
テスト用紙が行き渡ったのを教壇の上から確認した小田原は、パンパンと手を叩くと時計を指差した。
「ハイ! ルックアット、ザ・クロック! 今が10時ですので、10時半までテスト時間とします! それでは、スタート!!!」
なぜ「10時」は英語で言わないのだろう、などと引っかかったのは俺だけだろうか。
小学6年の3月とくれば、授業なんてほぼ完了している。消化試合みたいなものだ。このテストにしたって、その無駄な期間を憂いた小田原がいらぬ気を利かせて実施しているだけに過ぎない。
こんなの誰が真面目にやるんだろう。
俺はぷいとテストから目を切って、窓際の利を活かし外を眺める。
体育でキャッキャ言いながらサッカーをしている3年生くらいの男子達を見ていると、自分の当時が思い起こされるようだ。いいなあ、気ままで。
……って、状況的には今の俺の方が気ままなのか?
呑気に思考中の俺の耳に、前の席からカリカリと鉛筆を走らせる音が届く。アオイは必死にテストに励んでいるらしい。
こんなテスト余裕であるはずの学力を有し、無事に希望校に合格して、俺なんかよりもっと一息ついていいはずのアオイがだ。
遊ぶのも我慢して勉強していたはずだ。俺だったらこの時期学校休んじゃうかも知れない状況で、消化するだけのテストに必死に励む。
……俺もちょっとは見習って、真面目にテスト受けてみるか。
俺はようやく鉛筆を構えテスト用紙と向き合った。
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