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(今日の授業は散々だったな......)
大事な学習プリントは配り忘れるし、古典の訳は一つづつずれていて生徒に指摘されるまで気づきもしなかった。
8時過ぎに家に帰ると、私は晩ご飯も食べずにクローゼットに向かった。扉を開けると、仕事で着るようなスーツ、黒や紺の服ばかりがかけてある。
それから私はありったけの服をクローゼットから引っ張り出した。ほとんど空になったクローゼットの引き出しの上に、ギフト用に包まれた小さい小箱が現れた。
先生に借りた白いハンカチ。
洗剤でしっかり洗ったのに、ファンデーションがどうしても落ちなかった。だから新品のハンカチを百貨店で買ったけれど、渡すタイミングなどなかった。私は小箱を掴んで、外出用のショルダーバッグに入れた。
クローゼットをふたたびのぞき込む。すると隅の方で紙袋が小さく潰れていた。中をのぞくと夏物として買った、タグが付いたままの水色のフレアロングスカートと白いブラウスが入っていた。
「これだ……」
スカートなんてはくの何ヶ月ぶりだろう。ただ先生と出かけるだけなのに、スカートなんて大げさだろうか。じゃあなんで買ったんだろう。矛盾してる。
私はため息をついた。考えたって仕方ない。
少しでも綺麗に記憶に残したい。少しでもいい想い出にしたい。
きっと最初で最後になる。
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