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Chapter.3 友達はできましたか?
友達がほしかった。
でも、誰かと親しくなり始めると、この人じゃない、そんな気持ちがわきあがる。
そんな時は自分が嫌になった。何様だ。
こんな私に友達がいなくても仕方ない気がした。
でも、友達がほしい。その思いに嘘はなかった。
恋人はほしくない。友達がほしかった。
友達に、なりませんか。
そんな手紙が来たのは、30年後の昨日のこと。
私が30年前に音楽雑誌に載せた「友達募集」の投稿を古本屋で見つけたのか。あるいは30年の間、どこかを彷徨っていたのか。
何にせよ、もっと早く届いてほしかった。
友達募集欄。
私は架空のバンド、架空の漫画家の名前を書いて「マニアックですけど、もしファンの方がいたら友達になりたいです。返事は絶対します」と書いた。
検索なんて存在しない頃。もし手紙が来たら、それは嘘つきだ。嘘つきとなら、仲良くなれるかもしれないと私は考えていた。
あなたは嘘をついてますよね。
手紙は、そう始まっていた。
でも、あなたの気持ちもわかるような気がします。そう続いていた。
お前に何がわかる、と思う。その気持ちもわかると言う。本当かよ、と今あなたは思いましたね、と。
あなたはきっと、自分自身を友達にして、生きていくしかないんだと思います。
手紙は、そんな風に終わっていた。
頑張ってください。そんな言葉まであった。
本当に、この手紙はどこからやってきたのだろう。私は手紙を破り捨てた。
そんなことは、わかってるよ。
30年間をかけて、身に沁みてわかった。
この世には友達を作れる人たちと、作れない私がいる。
でも、私は本当に友達がほしかったんだ。
あなたのような、友達が。
私のような友達が。
(了)
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