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「大丈夫。行こう?」
西島先輩が私の背中をぽんと叩く。
何気ないことだったが、どきっと胸が高鳴る。西島先輩が優しく腕を引っ張るのでそのまま歩き出した。
ここは田舎町ということもあり学校から徒歩十分、最寄り駅の一つ隣の駅まで行かなければ食材以外のものは買えない。
電車の本数は三十分に一度。電車を待って駅からすぐ側の百円ショップに到着した。
店内には明るめの曲が会話を邪魔しない音量で流れている。
西島先輩は買い物かごを持った。
「なあ、水瀬の想像する晴れた空って、白い雲はある?」
「白い雲?」
「青空に雲があったらいいなって、仲間がいるみたいじゃない?」
「いいですね。それは青空が私で、雲が西島先輩ってことですよね?」
「ん?」
「あ……」
私は……何を言っているんだろう?
黙れと、自分の口に揃えた指先を当てる。
「青空に雲を一つだけつけとくか」
「え」
「この青空は雲一つで十分」
「そう、なんですか?」
私が首を捻ると、西島先輩はくすくすと笑って雲の形の小さな磁石を買い物かごに入れた。
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