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ロッカーが生まれ変わった新学期、私の学校生活も変わる。
一人占めになったロッカー。一人になったけど、ロッカーを開けるたびにふわりと思い浮かぶ優しい顔がある。
「何これ!」
登校してきた海は、私のロッカーの中を二度見して声をあげた。
「ロッカーデコ。西島先輩にしてもらった」
微笑むと、海はため息をつく。
「いなくなったと思ったらこれだ」
「ん?」
「あー、このロッカー燃やしたい。今すぐに」
「えっ!? だ、だめだよ!!」
何かされないようにロッカーの扉を慌てて閉めると、海は笑った。
「本気にしすぎ」
「うん?」
「俺は遥が悲しむことはしないんだ」
つんとそっぽを向き、海は口を開く。
「あ、ありがとう」
何だか……そっけない態度でも分かる優しさってあるよねと、ふと思う。
「なあ、何で聞かなかったの? 西島先輩の連絡先」
「うん。ずっと聞きたかったけどね、聞けなくて」
「西島先輩もどうして聞かなかったんだろう?」
「どうして、かな……」
言いたくなかった可能性はある。
これでさりげなく縁を切ろうとした可能性は0じゃないと思うから、今は答えをうやむやにしていたい。
この現実は……今は見たくない。その思いと夢を半分ずつ持ち合わせ揺れ動く心に立ち向かい、私は来る日も来る日も勉強をした。
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