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「今までロッカー半分こしてくれてありがとう、水瀬」
卒業式が終わった後、ロッカーの前で西島先輩はお礼にクッキーをくれた。
透明な袋にラッピングされたそのクッキーは都会にありそうなお洒落な感じで、とても美味そうだった。
クッキーと一緒に、イチゴ味とパイン味の飴が一つずつ入っていた。西島先輩がいつも食べている大好きな飴だ。ラッピング袋の中に後入れしたみたいだ。
「ありがとう、ございます」
手を伸ばして受けとるのに、少しだけ躊躇した。……貰わなかったら西島先輩がいなくならないわけではないのに。
受け取ったクッキーと飴を眺める。
西島先輩は今日、アメリカの大学へ行く。
アメリカの大学は八月の後半から始まるが、現地に早く慣れるために卒業後、すぐに出発する様子。
私はこれから先、ずっと一人でロッカーを開け閉めしなくてはならない。
それは普通のこと。
でも何だか寂しくて、私は思わず口をつぐんだ。
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