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「振られたけどまだ好きでさ。すぐ次の恋には中々いけなくて……それを言うのはやっぱり、恥ずかしいじゃん」
言いながら私の目に涙が浮かぶ。どうして浮かんだのかはわからない。気づけば頬も少し濡れていた気がした。心臓の動き方もなんかおかしくて少し息をしづらくなった。だけどこの一筋の涙が私の嘘に真実味を帯びさせてくれた。
「そっか……ご、ごめんね」
尋ねてきた女の子が気まずそうに言った。
興味津々に聞いてきた子たちはそそくさと背を向けて着替えに集中していた。その様子に私は少しスッとした。こういうものは興味本位とか好奇心に任せて聞くもんじゃないんだ、と胸中であっかんべーと舌を出していた。私って意外と女優だったのかな、と思いながら勝手に出てきた涙を拭うとその手を掴まれた。
「碧人くんには彼女がいるから無理だけど、次の恋を応援しているからね」
だから次の恋はすぐしたくないんだってば
言っていることが今一伝わっていない気がしたけれども、とりあえずこの場を切り抜けられたのだからよしとした。
これで暫くは面倒くさく聞かれることはないだろう。
”すでに失恋してかわいそうな女の子”
それを演じれた私は、例え嘘で塗り固めた私であっても面倒なことに巻き込まれずにすむならそれでよかった。
……その、はずだったのに
「おめでとう」
翌日。
教室に入った瞬間突然そう言われた私は、いったい何が起こっているのかわからなかった。
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