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「今では誰もが付き合ってて当たり前なんだから俺にしとけよ。どうせ好きな人いないんだろ?」
「いるよ! ……彼女がいる人だけど。少なくとも由恵は好きな人いる!」
彩音が私の代わりに応えた。
少し余計な一言を付け足していたがとてもありがたかった。
けれどそれで簡単に引き下がる太郎でもなかった。
「じゃあ猶更都合がいい。ほら、中学になったら誰もが付き合ってて当たり前じゃん。俺のクラスメイトも半数以上はカップルいるし。それに俺ら別に嫌い合ってないだろ? だから付き合うのが必然だって」
「……どういう、意味」
本当に、意味がわからなかった。
どうしたら私たちが付き合うという結果に行き当たるのか全く分からなかった。震える私の袖を彩音がそっと握った。その手も震えていたから、太郎の異常さに彩音も怖かったんだと思う。
「忘れたの? 小学生の頃いつも俺の手をしっかり握ってくれたじゃん。俺が離れにくいようしっかり繋いだら、繋ぎ返してくれたじゃん」
「それ、腕相撲のことでしょ? だったら他の男子も一緒」
「俺と他を一緒にすんじゃねぇ!」
いきなり怒鳴られて私は身体が動かなくなってしまった。
――怖い
今まで、男子は好きな遊びを一緒に楽しんでくれる対象だった。
だけど、目の前の男子は……男は、どうだろうか。
「それにみんな好きって言ってただろ。じゃあ俺もってことじゃねぇか。どうせあの日も適当に人気な奴を指しただけだろ?」
言われて麗に好きな人を聞かれた時のことを思い出す。ああ、そうだ、そういえばあの場に太郎もいた。だって同じクラスメイトだから。いつも太郎は遅くまでロボットを自分の机の上で作っているから。でも、太郎が言っているのはあくまで小学生の頃の話。昔の話だ。
今は、違う。
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