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見上げた村上の顔は少し緊張してて、それがまたかっこよくて可愛くて。だけどその先に未樹ちゃんの泣き顔と『絶交』の文字が見えてしまって。その後起こりうるのは独りぼっちと言う学生生活で。
本当は自分の身を全部任せたかった。
抱きしめて欲しかった。
私も好かれていい女子なんだと思わせてほしかった。
だけど友達を裏切るなんてことはできなくて。
私は、せめて、せめてものの思い出として「手を、ください」と嗚咽交じりに言った。
素直に手を出してくれる優しい村上。
私の好きなことを全部共有して一緒に笑ってくれる村上。
帰宅部の癖に私より大きい手を持っている村上の手の上に私は自分の手を重ねて。
ぎゅっと、握りしめた。
私の精一杯の大好きを込めて。
「ありがとう、元気出た」
「……本当か?」
「うん、平気」
「まだ泣いて……」
「平気だってば!」
しつこく尋ねてくる村上の言葉を振り切るように声を荒げて、私は手を離した。
そう、もう、これでおしまい。
どうせ嘘で塗り固まった私だ。
今更嘘を重ねたところでもうなんともない。なんともないから
「そういえば村上、昔言ってたね」
「ん?」
私は涙を拭って、鼻をすすって、もう一度村上を見つめる。
「友達になった女子が自分に惚れて困るって。それ聞いた時ぶん殴りたくなるくらいむかついたけど、そんな君にいいお知らせです」
告げた瞬間村上の顔がサッと青ざめた。
多分彼はこの続きを聞きたくないのだろう。
だけど私は容赦しない。
自分にも、君にも。
私は、深く、深呼吸する。
これを言ったらもう戻れないと知っているから。
手の中に残っている温もりをぎゅっと握りしめて、私は声を絞り出す。
「私があんたなんか好きになるわけないから。大丈夫」
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