始まり

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 全部を聞いて私がまず思ったのは、別に独り占めはしていない、という憤慨だった。ただ遊びに誘う女子が私なだけなのだ。遊びたいなら遊べばいい。誘えばいい。私にとって簡単な事だったから、麗たちにとってどれだけ難しいことなのかさっぱり察することができない私は相変わらず意味がわからなくてクエスチョンマークを浮かべ続けていた。  それでもお構いなしに「だから、好きな人教えて。一番好きな子」ともう一度麗は言い放った。  ――めんどくさい  そんな思考が過ってしまった私は「じゃあ」と2番目に人気な男子を適当に指した。好きだけど、友達として好きなだけ。一応嘘はついていないし、1番人気だとなんかややこしそうだから2番人気を指しとけば無難だろうという安易な気持ちで言った。子どもの浅知恵ではあったが、この無駄な会話を切り抜けるにはいい判断だったとこの時の私は自負していた。  ――それに、私が指を向けた碧人(あおと)はクラスメイトの中でも面白い奴だった   私をからかってくるやつでよく鬼ごっこになるし、力入れてバシバシ叩いても笑って許してくれる奴だから割と好きな方には間違いなかったのだ。と、そこで、私の答えを聞いた女子たちは「なーんだ、じゃあ大丈夫だね」と言葉を残してようやく去ってくれた。声をかけてきた時と比べて思ったよりあっさりと去っていくものだから私は呆気にとられた。けれども、これで面倒ごとは減るだろうと楽観的に考えながらそのまま帰宅することにした。  結局本当に恋愛として好きかどうかと言われたら、多分好きは好きでもこの頃は友達だった。  友達以上には、成り得なかった。未満でもない、そんな楽しい関係。  だから、私のこの答えは――嘘  滅多に嘘をつかない小学生だった私がついたこの小さい嘘は。  私の後の人生を滅茶苦茶にするほどの大きな嘘になっていってしまった。
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