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……でも、流されるわけにもいかなかった。
「だめだよ幸。アンタには、彼女がいるから」
「別れた」
「だから……え?」
離れて、と続けようとした言葉は私の口から出てこなかった。困惑し、戸惑う私からゆっくりと離れた幸が、真摯な表情で私の顔を覗き込む。
「別れたんだ」
その言葉を本当に真に受けていいかわからなかった。
私は愛されなかった女で居続けていたから。
いつしかの村上に似たその瞳を素直に受け止めることが私にはできなかった。
「もう……わからないよ」
本心だった。
どうすればいいのか何もかもわからなかった。
すると幸はふわっと笑って「うん、今はそれでいい」と私の頭を撫でてくれた。あったかくて大きな手は、凄く心地よかった。
「次の集まりに絶対に来て。約束。そこでお前に言いたいことがあるから」
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