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大学生2
一週間後にあったボーリング大会にきた私は、淡い期待が胸の中で募っていた。
ただ、幸が好きかと言われればよくわからなかった。
友達としていい奴だとは思っていた。趣味は違うけど、幸から出てくる話はどれも面白くて私の趣味を増やしてくれた。そして幸は、私の好きなものを「いいじゃん」と肯定して好きになってくれた。
すごくいい友達。
それが私にとっての幸の位置だった。
「どうしたの?」
一緒に来た唯奈が私の顔を覗き込んできた。
「いや、別に……うん、なんでもない」
私はそう答えるしかなかった。
「あ、幸だ!」
唯奈の言葉に私は急いで顔を上げた。
そして、絶望した。
「いやー、相変わらずのラブラブカップルだね~」
そう、唯奈の言葉通りの光景がそこにあったから。
幸は別れたと言っていた彼女と一緒に来ていたのだ。
ああ、ほら、やっぱり
淡い期待は簡単に打ち砕かれ絶望ばかりが私を覆う。裏切られた私の心はもうぐちゃぐちゃだった。
もうどうでもいい。
何もかも。
私を好いてくれる人なんて、どうせいないから。
絶望に慣れている私は他の人と楽しめばいい、と決め、年上のかっこいい人に誘われたから一緒にチームを組んでボーリングを楽しんだ。5つぐらい年上のその人は恭哉という名前ですごく紳士的だった。私が座ると「飲み物は?」と聞いてきたり「おしぼりいる?」と尋ねてきたりひたすらに優しかった。そんな優しさを受けたことがなくてちょっと胸が高鳴っていると、恭哉さんは私の隣に座った。席が空いているところがいっぱいあるのに隣に来たものだからビックリしているとそっと腰を引き寄せられた。これが大人の大胆さかと吃驚していたら「いいスタイルだね」と体系を褒められた。初めてのことだった。どちらかというと私はぽっちゃり系だ。なので生まれて初めて褒められたと言っていいくらいだった。恐怖よりも嬉しさで気持ちが高揚していると「俺、少人数の方が好きだから、他の数人も誘って居酒屋いこっか」と誘われた。2人きりだったら怖いけど他の人もいるならいいかと私は承諾した。
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