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嘘
次の日学校に来た私は「碧人くんが好きなの!?」と色んな女の子に詰め寄られて圧倒された。教室に入って早々、私に駆け寄ってきたかと思えば他の人たちに聞こえる声――というか最早叫び声に近い大きさで言ってきたのだ。
「え、ええ?」
突然詰め寄られたのも吃驚したし事実と異なることを教室中に聞こえる声で公にされて私はかなり困惑した。ふと視界の端にいた麗の方を見ると「ごめーん、言っちゃった」と手を合わせながら舌を可愛らしくちょろっと出していた。その姿を見て私はなんとなくだけど、ハメられたんだと気付いた。
「いや、それさぁ」
私はすぐに訂正した。
何だかんだ声の大きい女子と定評のあった私は気持ちを正直にどんどん言ってしまう。
だから自分の為に言った。
「皆が彰とか颯太が好きだから教えてって言われて」
「ちょっと!」
私が最後まで言い切る前に麗が私の腕を勢いよく引っ張った。爪の長い子だったから、季節が夏ごろだったこともあって半袖を着ていた生身の腕に鋭い爪が食い込んで痛かった。
「いったい!」
針が突然チクっと刺さって痛いと感じると同時に手を振ってしまうのと同じで、突然の痛みには反射的に動いてしまうのが人間だ。私は思わず腕を振り払った。男子と対等に遊べるだけあって力も強くガタイのいい私の振り払いに華奢でか弱い麗が耐えられるわけなんてなく、彼女は「キャッ」と可愛らしい悲鳴を上げて倒れた。その際に傍の机にぶつかっていたが、それほど音はしなかったので軽くですんでいたはず、だが。
「叩くなんてひどい!」
「ごめん、爪が痛くて」
「ひどい!」
「麗ちゃん大丈夫?」
すぐに謝ったが取り付く島もない。
麗のグループの子たちもすぐに駆け寄ってきて麗を助け起こしていた。幸いただ倒れただけでケガはなさそうな様子にホッとしたけれど、涙目を浮かべて「ひどい」を繰り返す麗にどうすべきかわからず困り果ててしまった。
と、私の腕からじわりと血が滲み出てきてポタリと床に滴が落ちた。思ったより深く皮膚がめくられたようで、血が床に落ちたのを見てジンジンとした痛みが襲ってきた私は「いた……」と思わず腕を触ってしまった。
「ちょっと、大げさにしないで! 私の方が痛いのにひどい!」
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