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「お前俺の事好きなの?」
保健室の先生に絆創膏を貼ってもらい保健室を出ようとしたところで声をかけてきたのは、私が適当に名前を指した碧人だった。扉を開けて突然言われたものだから私は呆気にとられるしかなかった。
「え……と」
「あー、本当なんだ」
私が答えられずにいるとそれを肯定と取った碧人が納得したように頷いた。
「いやー、なんかゴメンな。俺好きな人いるんだわ」
「あー……そう、なんだ?」
「そ、だからごめんな」
「いや……別に」
「いやー、にしても意外だったわ。お前も誰が好きとかあったんだな。んじゃ」
勝手に解決して言いたいことだけ言った碧人はそれだけ言って私の前から颯爽と去っていった。
取り残された私は暫くポカンとしていた。
今何が起こったのか理解するのに少々の時間を要した。とりあえず扉を開けっぱなしにしてたらだめだ、という妙な真面目な思考が頭を過ったから保健室のドアを閉めようとケガをした方の腕で引っ張ろうとして――突っ張った絆創膏の地味な痛みで私の思考はハッキリしてきた。
告白をしてもいないのに振られた
好きだったか、と言われると友達としては好きだった。
だからだろうか。
この、胸の奥の妙なチクチクは。
まるで針でずっと突き刺しているような変な痛みは。
私は別に碧人のことを好きでも何でもなかった。
いい友達。よく遊んでくれる友人。ただ、それだけ。それだけだったのに。
今のこのやり取りでもう気軽に遊べなくなるんだと思うと悲しくて悲しくて仕方がなくて、絆創膏の内側にある痛みなんてどうでもよくなるほどなんだか無性に泣きたい気持ちになって。
「……なんか、痛い」
どこが痛いのか、という明確な言葉は言えない。
ただ、痛かった。
ケガをしているところじゃない何かが、凄く凄く痛かった。
ごめんな、ていう碧人の言葉が私の胸に深く突き刺さって取れない。
意外だ、という言葉が妙に頭の片隅に残って仕方がない。
なんだか、まるで、まるで。
……異性として、見れないよ、と宣言されたかのようで
まるで、私は異性に愛されてはいけない女子、と言われたみたいで、私の中で何かが無茶苦茶になっていた。
――そして、この傷が。
後々始まる私の学生生活を苦しめた。
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