中学生

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 初めての制服には結構心が躍った。  大人になったみたいで嬉しかった。  まだ子ども、だなんて思考は全くなかった。制服を着た大人だ、と私は姿見の前ではしゃいでクルクル回って全身を眺めていた。小学校と違い中学校は全部で5クラス。結構多いな、というイメージだった。3組という丁度真ん中のクラスになった私は教室に入ってまずびっくりしたのは、小学校が一緒だった人が4分の1もいなかったこと。だからか、周りは友達を作るのに必死だった。そのおかげで恋だの好きだのという話題は一切出なくて、これからよろしくね、という言葉を交わして新しい友達が出来たことに喜んでいた。  勿論、恋愛が全くないとは言えなかった。  小学校での恋愛話の名残は多少はあった。他のクラスに小学生が同じだった人たちが間違いなくいたから。だけどやっぱり違うクラスってだけで、壁一枚で隔たれているだけなのにまるで「別世界の人」と言わんばかりの装いだったので恋愛話に巻き込まれるといったようなことはあまりなかった。小学校に比べてそもそもの男女の人数が多かったのもあるのだと思う。全員を認識するというのはかなりハードルが高かったから。麗が違うクラスだったのも大きかったかもしれない。  ああ、気にしなくていいんだ。  友達と遊ぶ楽しさだけを考えていいんだ。  そう思った時の日々はどれだけ楽しかったか。あれ程焦がれた輪に戻れたことがどれだけ嬉しかったか。  ……でも。  数か月経った頃、私は気づいた。  恋愛話をしないと友達を作れない環境なのが中学なのだと  さすが思春期、というべきか。  色恋の話が出ない子は『時代遅れ』という謎のレッテルを貼られて明るくわいわいするグループには入れてもらえないのだ。色恋だらけだと面倒くさいと私は思ったのだけれど、その時周りにいた人たちにとって恋愛は学校生活において必要不可欠だったらしい。それでも、私のように恋愛に興味のない数少ない女子をなんとか探し出せた私は自分で人を集めてグループを作った。女子っていう生き物は面倒くさくて、グループの中に入れない人は関わっちゃダメ、的なもう本当に謎過ぎる暗黙の了解があったからだ。それを知ったのは私が男女分け隔てなく喋れていたおかげなのだが、いつまでもそうはいかないし、また麗の時みたいな事が起こってほしくないからちゃんと女子だけでつるむようにしていた。  ――けれど  気づけば「あの人かっこいいよね」という話題が私が作ったグループでもとうとう出てき始めてしまい私はついていけなくなった。恋愛に興味がない、のではなくて単純に同年代に興味がなかった人たちだったようで、画面の中の二次創作のキャラクターや芸能人、別の学校の人、果てには若い男性教師という幅広い恋愛をしまくっている人たちだったのだ。おかげで私は「え、好きな人いないの?」と目を丸くして驚かれることがしょっちゅうだった。いつも思うのだけれど、皆どうして数週間ごとに聞いてくるのだろう。そんな短期間で簡単に恋愛って出来るものなのだろうか?私はそれが不思議でたまらなかったが、正直な気持ちを言ってしまうと不機嫌さがたっぷり漂うしかめっ面を向けられたので「うーん、良い人が見つからないや~」と濁すしかなかった。そう答えるたびに、心がかぎ爪でえぐられるように痛かった。なんでかはわからないけど。
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