泣き声の消えた日

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 氏家真由美は銀行員の夫とできちゃった結婚をした。避妊はしたつもりだったが、蓋を開けてみれば、赤ん坊を授かっていた。  子煩悩の夫は喜んだが、真由美は落胆した。元々、子どもには興味がなかった。自分のことも満足にできない自分には、子育ては絶対に無理だと思った。  だが、できてしまったのは仕方がない。これも運命だと思って受け入れた。  そして、産まれて来たのが、翔太という男の子だ。  翔太は元気にすくすく育った。だが、夜泣きがひどかった。寝ていると、突然、激しく泣き出す。飛び起きて、真由美は翔太を抱っこしてあやす。  そして、ベビーベッドに寝かしつける。だが、再び、激しく泣き始め、再び、起きて抱っこする。最低、数回はこのような状況になる。  だから、自然、十分な睡眠がとれず、疲労ばかりが蓄積していく。翔太は真由美の苦労を知ってか知らずか、夜泣きを繰り返す。  夫は翔太を泣かせるなと真由美を責める。夫の機嫌を損ねてはまずいと思い、必死になって翔太をあやす。  ストレスも溜まる。夜も満足に眠れない。夫婦仲も冷めていく。翔太が生まれてから、真由美は踏んだり蹴ったりであった。
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