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そんな真由美の苦労を知った神様が赤ん坊から、泣き声を奪うウィルスを誕生させた。真由美はそう思っていた。
始め、泣かなくなった赤ん坊が横浜市内の団地から大量に見受けられた。そして、横浜市内から東京、千葉、埼玉へと波及していった。
まさしく、パンデミックだった。そのウィルスは赤ん坊にしか感染せず、小学生から大人には感染しなかった。
0歳児から2歳児の、まだ二足歩行もままならない時期の赤ん坊に感染が多かった。
瞬く間にニュースになり、専門家の間では、即効性の薬やワクチンなどはなく、感染させないように、赤ん坊どうしの接触を避けるようにと注意を促すに止まるだけだった。
ただ、赤ん坊が泣かなくなることで、今まで夜泣きに悩まされてきた母親が十分な睡眠をとれるようになり、育児ノイローゼの相談件数がみるみる減少した。これは福音なのか。一部からは歓迎されるウィルスになった。
ただ、感染した赤ん坊は言語を話す能力が減退すると云われた。だから、一部の母親は感染を防ぐために、赤ん坊を外に連れ出さなくなった。
赤ん坊を中に閉じ込めることによって、ママ友間のネットワークに歪みが生じて、近所づきあいがなくなり、また、日光浴をさせないことで発育に問題が起きたりと、負の側面が顕れる。
しかし、後遺症を心配するあまり、外に出さない行動は、愛情の証にもとれる。誰だって、我が子が健康にすくすく育ってほしいと願うものだ。
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