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「おい、翔太のことも少しは考えろ。それでも母親か?」
「あなたは気楽でいいわね。翔太の面倒はほとんど、わたしが見てるのよ。偉そうにしないで」
「だけどな、翔太がもし、まったくコミュニケーションできなくなったら、どうするんだ?犬や猫ならともかく、翔太は人間なんだぞ」
夫も負けじと食い下がる。
「わかったわ。飲ますわ」
それを聞いて安心したように、夫が笑った。
真由美は薬を飲ませなかった。また、夜泣きで眠れなくなる日々に逆戻りしてしまうと考えただけで、ゾッとする。真由美は一日でも長く、静かな時間を過ごしたかった。
もちろん、ワクチン接種もさせるつもりはなかった。
そんなことをしている自分はわがままだろうか?でも、世の中の母親の大半は、泣かなくなった赤ん坊の方がいいに決まっている。決して男親にはわからない。
静かな時間が増えることによって、我が子を愛おしく思えるようになるなんて、皮肉なものだ。
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