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オレは答える。
「売れるのと同じでな、売れ続けるのにも運がいるわな。オレ、バターのヤツがいなけりゃ芸人にもなってねぇしなぁー。まああいつ、バターの食い過ぎで一昨年死んだけど。」
プカー、とタバコの煙を吐く。
うつむく若手芸人に、オレは言う。
「あんちゃん、顔見してみろ」
「え? 顔?」
「すまし顔すんな。もっとこう、変顔とかできねえのか?」
「こう……ッスか?」
「ッダハハハハ、ブサイクだなぁ〜!」
「一応マジメな相談しんスけど……」
「何言ってんの若いの。結局最後にはそういうのが売れ残るんだよ。オレ見てみぃ、デビューしてずっとジャガイモだぞ?」
オレは太って立派になった腹をさすって、ガハハと笑う。
するとスタッフが呼びに来た。
そろそろ食レポ番組の収録準備が整うという。
「さ、行こうかアンチャン。なんでも“ジャガイモ料理専門店”らしいぞ」
「じゃがいもさん目の前にこんなこと言うのもなんですけど、オレ、じゃがいも結構苦手で……」
馬鹿だなぁとオレは笑う。
「ジャガイモってのは痩せた土地でも育つ癖に栄養満天なんだぞ? 食ったらオメメェ、悩み吹っ飛んで元気になるんだ」
そうしてオレは今日もお茶の間に元気を届ける。
【おしまい】
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