【喜び、民衆、国道】

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 ガラガラの高速道路を走る黒塗りの公用車が一台。  乗ってるのは若い運転手と、九十代ほどの年老いた政治家だ。 「今日は休日の筈では?」  政治家の質問に運転手が答える。 「そっすね〜」  気の抜けた返事。 「なぜこんなに空いている」 「え〜、分かんねえっすか?」 「分からん」  運転手はミラーで政治家をチラリと見る。  政治家の顔が真面目そのものだったので、運転手は答えることにした。 「……そりゃあ、走行税が導入されたからじゃねえっすか? 国道だろうと私道だろうと走った分だけ税金取るってのに、そりゃあ車は出せねえっすよ」 「……そうか」 「……」 「……そうか、そうか」 「おっ、理解できましたぁ〜?」 「だったら“自宅税”を導入しようか」 「は?」 「休日に外出せねば単位時間あたりの税金を取る。そうすれば外出する国民も増えて、経済も発展するだろう。“ニート税”でも良いなぁ!」 「……」  運転手はミラーで政治家をチラリと見る。  政治家の顔は自身に満ちていた。  運転手は溜め息。 「……んなことしたら国民辞めるわ」 「ん? 何か言ったか?」 「いえいえ、なんもぉ〜♪」
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