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エピローグ
あれからおなくさんは、まるで人が変わったように旦那さんと共に、休みの日は病棟で自主トレをしてました。もちろん笑顔です!旦那さんもとても嬉しそうです。車椅子だったのに、2週間くらいでピックアップ歩行器になり、2ヶ月くらいで手押し車で退院されました。
退院時、おなくさんが「貴女のおかげよ、本当にありがとう。これからは主人と笑顔で過ごせるように顔晴ります」と、ご夫婦仲良く寄り添いながら病院を後にしました。
ドロップさんもあっという間に、ご自身の足で元気に家族の方と共に退院されました。アリナさんの良きお話し相手をしてくれて本当に感謝です。アリナさんが嬉しそうにいつも報告しに来てました。
クッキーさんはというと、もちろん病状の関係もあります。毎日毎日、ご自身のお話や不満を誰かに長時間話していて、リハビリにも消極的でした。
皆さんも疲れてしまうので、率先して話しかけたらご指名されるようになり、あまりにも長かったり見たい番組が始まる時は、周りの方が看護師さんに報告してくれます。ひどい時は2時間話を聞いていました。「無視すればいいよ」と、言われるんですけど、私はそういうの苦手なんです。
そんなクッキーさんは、退院前夜に名前の由来にもなったクッキー缶と果たし状みたいな達筆のお手紙をプレゼントしてくれました。翌朝、家族と共に病室を後にしたのですが、あんなに暗い顔しながら退院する方は見たのは初めてです。
実は、この間にアリナさんが私のところへ会いに来てくれたんです♪この病院の受診は最後になり、お住いの近い病院になるそうです。「最後にどうしてもあんたに会いたくてね~」と、可愛いピンクの手押し車でご登場です。短い時間でしたが、一階のカフェスペースでお茶をしながら、退院していったおばあちゃんたちのお話をしました。良かったよ、とほっこりした笑顔でココアを飲むアリナさんが可愛くて仕方ありません。
時間はあっという間に過ぎて、別れの時です。元気でね、と私は手を振り「あんたもね~~」と、アリナさんも手を振りながら娘さんと共に、ゆっくりと病院を後にしました。
様々なおばあちゃん達とふれあい、私は沢山の生きるパワーを貰いました。つらい記憶を持ちながらも一生懸命リハビリをし、退院していく姿は退院まで半年かかった私の生きる道しるべになりました。言葉は時に誰かを傷つけ、時に励まし、笑顔となる。
病気になるのは、誰も好きでなったわけではありません。それでもしっかりと受け入れ、ポジティブに日々を過ごした方と、ひたすらネガティブになり、相手をも巻き込んでしまう方とでは、退院時のお顔が全然違います。それはどの世代の方も一緒です。
そんな私はというと、無事に退院した後は就職訓練施設へと笑顔で向かうのでした。おばあちゃん達との日々は、今も私の糧となり、私の心の薬となり、ピア活動をするきっかけとなりました。
終
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