5人が本棚に入れています
本棚に追加
パン子さんとアリナさん
転院して二か月が過ぎた頃、やっと六人部屋へお引越し。ここから始まるおばあちゃん達との物語。ある一人のおばあちゃんと二人きりの六人部屋生活スタートです。そのおばあちゃんを毎朝必ずパンを食べていたのでパン子さんにしましょう。
私は嚥下の問題でまだパン解禁どころか、おかゆだったのでいつも羨望の眼差しをパンに向けていました。ヨーグルトがある時は「ジャム食べる?」って、パン子さんはこっそり渡してくれてたり、おしゃべりが大好きです。互いのリハビリが終わった後は、夜ご飯までずっとお話していた。パン子さんは数日で退院がもう決まっていたんです。家族の方々と退院を楽しみにしてました。
そんなある日、私はリハビリがなかなか上手くできなく思うように体が動かせずに落ち込んでいて、パン子さんは優しく微笑み手招きしながら「こっちへいらっしゃい」と声かけてくれ、私は車椅子でゆっくりパン子さんの元へ向かいました。
優しくパン子さんは「どうしたの?いつもの可愛い笑顔が台無しよ」と私が打ち明けるまでずっと頭を撫でてくれました。私は周りの人はどんどん上手くいって、立っていたり歩いたりするを見ているのが辛い、もっともっと頑張らないと、泣きそうな顔をしながら打ち明けました。「隣の芝生は青く見えてしまうのね」と私の手をそっと握りこう言ってくれたんです。
「どうせ〇〇〇〇なら〇〇〇で〇〇〇〇かに〇〇〇なさい♪」
パン子さんのこの言葉は私の励みとなり、今もつらい時はこの言葉を唱えます。同じように悩み苦しんでる方にもこの言葉を共有しています。
翌日、おばあちゃんが一人やってきました。その名もアリナさんです。よく主治医にアリナ〇ンを飲んでたから飲みたいのよね、と話していたのが印象的でした。このアリナさんこそが、私のその後の人生を変える大きな出会いとなります。パン子さんとアリナさんの会話が聞くだけで面白くてお腹を抱えて笑ってしまいます。失礼な事だと分かっているんですが......。アリナさんは耳が遠くてなかなか聞き取れないんですが、パン子さんはマイペースにお話します。アリナさんの困り顔がでたら通訳開始です!!
「おはようございます、いい天気ですね」とパン子さん。「私は耳が遠くてそっちに行けたいいんですけど動いちゃだめなんでね」とアリナさん。「アリナさんはどちら出身なんですか?」とマイペースなパン子さん。「アリナさんは○○出身ですよ!」と私がフォロー。「そうなんですね、あらリハビリの時間だわ、ごきげんよう」とパン子さん病室から離れる。
「すまないね、私は耳が悪いからなんて言ってるのか分からないんだよ」とアリナさん。これが毎日続きます。大体、パン子さんが一方的に話して颯爽とリハビリへ向かい、アリナさんにフォローしてます。もう楽しくて仕方ありません。
お二人ともおしゃべりが大好きだから、互いにかみ合わず、キャッチボールせずに投げっぱなしです。時折、私がグローブでキャッチしてあげて球を戻します(笑)
そんな日々は長くはなく二日後にはパン子さんが退院してしまいました。
最初のコメントを投稿しよう!