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女性は何歳になっても乙女です。
再び、六人部屋は二人きりになりました。アリナさんはご自身のベッドエリアからは出てはいけないと看護師さんから言われていて、ちょっとでも出ようものなら注意されてしまいます。転倒の危険があるからなので私が監視役でした(笑)
アリナさんは入口付近で、窓際の私は斜向かいで監視しやすいのです。ここからアリナさんとの楽しい監視生活が始まります。
その大きなきっかけは某アイドルグループです。私はそのアイドルが大好きで食事しながらを番組を観たりしてます。そんなある日のことです。「〇〇〇だね~よく観てたわ」とベッドから真剣に私の備え付けTVにくぎ付けでした。
普段は朝ドラや大河しかみないと言っていたアリナさんが某アイドルグループを知っていることに驚きました。リハビリが終わったらリクエストがあれば、友達から貰った小型のDVDプレイヤーをアリナさんの所へ持っていき、二人でLIVE鑑賞をしていました。
メンバーの名前はアリナさんの旧姓でもある人は覚えていて、後は名前と顔が一致しないことが多かったので「これは普及活動するしかない!!」とオタク全開!STの担当者さん曰く、ボケ防止にもなるそうなので
一日二回のクイズタイムを設けることにしました。アリナさんは昨日食べたご飯を忘れてしまう事も多く、私と同じ脳卒中なので脳活性化にも繋がるかなとイケメン見ながらリハビリは楽しいみたいなので(笑)
クイズは二種類!アイドル名前当てクイズとアリナさん出身エリアの都道府県全部答えようクイズです。ルールはいたってシンプルで、私の持ってるグッズや雑誌を見せてどの写真が誰かをあてるだけ!都道府県クイズはただ言ってもらうだけで、ヒントは名産品で出します。
このクイズを続けようと思った大きな出来事が二つありました。ご家族の事は覚えているのですが、ご友人がお見舞いに来られた時にアリナさんは思い出せなかったのです。泣きながら何度も何度も謝っていました。かける言葉もなかったです。
アリナさんの所へは、娘さんが定期的にお見舞いに来ていました。クイズ大会を開催している私への負担を心配してましたが、アリナさんが楽しそうにしている姿をみて、微笑まれていました。娘さんも同じく大ファンとのことで、クイズの時は笑いが絶えません。「お母さん!○○君はこっち!なんで〇〇君だけわかるの?」と娘さんもヒートアップしてしまいます。
後日、娘さんと二人きりの時にアリナさんの事を話してくれました。このリハビリ病棟に来るまではいつも悲しそうにしており、娘さんに謝ってばかりだったそうです。「ここに来てからこんなに楽しそうに過ごせているのはあなたのおかげね、ありがとうございます」と涙ぐんでいました。私はこのまま続けていこうと心に誓ったのです。
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