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おなくさんに伝えたパン子さん魔法の言葉
アリナさんが退院して数日後、新たにおなくさんが仲間入りし、病院の都合なのか……私達と同じお部屋です。かなりの介助が必要な方なのですが、その事よりも気がかりだったのが、旦那さんへの数々の罵倒です。「なんであなたは私のいう事をできないの!私が欲しいのはこれじゃない」と、一生懸命介護してくれる旦那さんにあれこれ文句を言います。
私は大きな声も罵倒する声も苦手で、とても辛かったです。「不愉快極まりない」と、普段は温厚の方々も文句を言ってしまうくらいです。そして、深夜は急に泣き出してしまいます。それはもう目が覚めてしまうくらいです。トイレはポータブルを使うので、お漏らしをしながら大泣きします。
「どうしてここにいなきゃならないの!早く退院したいのになんで!私なんて死ねばいいのよ!」と、毎晩続きストレスが皆さん溜まりまくりです。こんな日々が一週間続きました。
ある日の昼食後に、私はおなくさんに声をかけました。「どうしてあんなに尽くしてくれる旦那さんに怒ってしまうのですか?あんなに奥さんのサポートしてれる方いませんよ?」と、思った事をぶつけてみました。興奮しないように手をそっと握り、しゃがんでおなくさんの目線に合わせお話しました。
すると、おなくさんは……ポロポロと涙を流しながら「違うのよ、本当は怒りたくないのに八つ当たりしてしまうの!病気になって体が思うように動けなくなって頑張っても全然よくならない!!!!」と、打ち明けてくれ、私は素直な思いを伝えました。
「怒りは何も生みません!誰かに怒りをぶつけるパワーをリハビリに注いで下さい!旦那さんと共にリハビリしていきましょ!おなくさんの有り余った感情を怒りをパワーに変えましょう!」と、何度も何度も背中をさすりながら、泣き止むまで傍に居続けました。
一時間後、やっと落ち着いてくれて「ありがとうね、ごめんなさい。リハビリ頑張ります!もう怒らないでリハビリ頑張ります」と、何度も何度も伝えてくれました。私はこの時にパン子さんからもらった魔法の言葉を伝えました。
「どうせ頑張るなら顔を晴れやかに笑顔で顔晴りましょう」
顔晴れで『がんばれ』と読みます。私がこの言葉にとても救われました。今もこの言葉を胸に、辛くなったら心の中で唱えます。パン子さんがくれた最高の宝物です。
おなくさんはこの日の夕方に隣の部屋へ移動しました。
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